厚労省の助言機関が「急速な感染拡大に至る可能性」と警告

新型コロナウイルスの感染が再び拡大している。

厚生労働省の助言機関(アドバイザリーボード)が11月11日、「11月以降に増加傾向が強まり、一部の地域では感染拡大のスピードが増している」との認識を示し、「このまま放置すれば、急速な感染拡大に至る可能性がある」と警告した。助言機関は感染症の専門家で構成され、厚労省にアドバイスする。

「GoToトラベル」の案内
写真=時事通信フォト
「GoToトラベル」の案内=2020年11月11日、東京都新宿区

この日、感染者は新たに1547人確認された。その後、14日には1715人となり、3日連続で過去最多を更新。大阪、神奈川、千葉、茨城、静岡の5府県は1日当たりの感染者数が過去最多となるなど、都市部を中心に感染が拡大している。

日本医師会の中川俊男会長は、11日の定例記者会見で「第3波と考えてもいいのではないか。政府には先手先手で感染防止のための手を打ってほしい」と医師会としての判断を示した。

厚労省の助言機関の警告に先立ち、9日、政府の分科会も緊急提言を出し、踏み込んだクラスター(感染者集団)対策を政府に求めた。

過度に怖がらずに、正しい知識で正しく恐れるべきだ

感染拡大の兆候を的確に捉え、効果のある対策を迅速に施す。感染症の危機管理はそうでなくてはならない。感染が拡大し、オーバーシュート(感染爆発)を引き起こせば、真っ先に犠牲になるのは高齢者や持病のある患者ら健康弱者だ。そうした意味で助言機関や分科会の対応、それに日本医師会の判断は評価できる。

しかし、専門家集団の警告が正しく伝わるとは限らない。これまでも感染者に対する差別や偏見、他人を監視しようという同調圧力が強まってきた。他人にマスクを強制する「マスク警察」という言葉まで生まれた。

冷静になる必要がある。厚労省のまとめによると、8割以上の患者・感染者はほかの人に感染させていない。運悪く感染しても80%の患者・感染者は無症状や軽症で治る。新型コロナウイルス感染症は、むやみやたらに恐れる必要のない疾病なのである。しかし侮ってはいけない。正しい知識で正しく恐れる必要がある。