コロナ禍でメンタルの不調に苦しむ人が増えている。芸能人の自殺が続いたことも大勢の人の心に影響を与えている。どうすれば心を軽くすることができるのか。精神科医で、『感情的にならない本』(新講社ワイド新書)など感情に関する数々のベストセラーで知られる和田秀樹氏が、感情の整理と健康長寿のコツについてまとめた『感情の整理学』(エクスナレッジ)を上梓。そのエッセンスを特別公開する──。(第2回/全5回)

※本稿は、和田秀樹『感情の整理学』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

全部を投げ出したくなることは誰にでもある

生きていると「もう終わりだ」と泣きたくなること、「なにもかも疲れた」と全部投げ出したくなることが、何度もありますね。

そこでポキッと心が折れてしまう人と、なんとか乗り切っていく人がいます。その差は、「心を切り替える力」「やりすごす力」「甘える力」の差だと思います。

心が折れやすい人によく見られるのは、負けず嫌いで完璧を追い求める性格です。物事が理想どおりに進まないことや、理想と現実のギャップにとても苛立ちます。

プライドが高いので人に弱みを見せられず、問題をひとりで抱え込んで孤立しやすい。そして窮地に追い込まれると一気に「もうダメだ」と心が折れてしまうのです。

プールサイドの女性の足元と水しぶき
写真=iStock.com/PeopleImages
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「芯の強いがんばり屋さん」がアブナイ

以前、76歳の元農林水産省事務次官が44歳の長男を殺害する事件が起きました。

長男はひきこもりがちで、親に暴力をふるっていました。直前に通り魔殺人事件があり、元次官は逮捕時に「息子も周りに危害を加えるのではと思った」と供述しました。

大手有名企業で女性新入社員がパワハラと過労のために自殺した事件でも、彼女が周囲に見せていたのは「芯が強くて、本当にがんばり屋さん」の顔でした。

どちらのケースも、誰かに相談できていたら、折れずにすんだと思うのです。