コロナ禍でメンタルの不調に苦しむ人が増えている。芸能人の自殺が続いたことも大勢の人の心に影響を与えている。どうすれば心を軽くすることができるのか。精神科医で、『感情的にならない本』(新講社ワイド新書)など感情コントロールに関する数々のベストセラーで知られる和田秀樹氏が、感情の整理と健康長寿のコツについてまとめた『感情の整理学』(エクスナレッジ)を上梓。そのエッセンスを特別公開する──。(第5回/全5回)

※本稿は、和田秀樹『感情の整理学』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

「ありがとう」というキラーワード

シリーズ累計発行部数1億部を突破した鬼退治コミック『鬼滅の刃』は、映画が大ヒットしたことで日本のみならず世界にも広く認知されました。この物語は、雪が降る中、町に炭を売りに行く主人公・竈門炭治郎に、母親が「ありがとう」とほほえんで送り出す場面から始まります。

家族を鬼に惨殺され、鬼狩りである「鬼殺隊」となった炭治郎自身も、周囲にまめに感謝の気持ちを伝えながら、鬼と闘っていきます。

読者の心を打つ言葉がたくさん詰まった作品ですが、私は「ありがとう」こそ、この作品の本当のキラーワードだと思います。

白いハートを持つ女性の手
写真=iStock.com/Mizina
※写真はイメージです

「鬼」を滅する言葉の力

「ありがとう」は、言ったほうも言われたほうも心がなごみ、トラブルが遠ざかる、まさに「鬼滅」のキーワードです。好きな言葉、子どもが親に言われてうれしい言葉などのアンケートでも、「ありがとう」は常にトップグループにランクイン。

「ありがとう。かなり疲れたんじゃない?」
「どうもありがとう。いつもながら早いなあ、助かったよ」
「ありがとうございます。おかげさまで間に合いました!」

ありがたいと思ったら、なるべく笑顔で、できれば「プラスのひとこと」も添えて、感謝の気持ちを惜しみなく、声に出して伝えてください。

知り合いなら「○○さん、ありがとう」と、必ず名前も呼びましょう。

人間は自分のことが大好きで、自分の名前ほど甘い響きを持つ言葉はほかにない、と言われます。「最初に名前を呼ぶと、続いてどんなことを言っても、相手に関心を持ってもらえる」というデータもあります。