コロナ禍でメンタルの不調に苦しむ人が増えている。芸能人の自殺が続いたことも大勢の人の心に影響を与えている。どうすれば心を軽くすることができるのか。精神科医で、『感情的にならない本』(新講社ワイド新書)など感情に関する数々のベストセラーで知られる和田秀樹氏が、感情の整理と健康長寿のコツについてまとめた『感情の整理学』(エクスナレッジ)を上梓。そのエッセンスを特別公開する──。(第1回/全5回)

※本稿は、和田秀樹『感情の整理学』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

不安の正体は「大切なものを失う恐れ」

不安のない人はいません。不安感情は、すべての感情の中で最もコントロールがきかず、人の判断力を狂わせるモンスター。その正体は「大切なものを失う」ことへの恐れです。特に、健康や収入や家・家族を失う不安は人をパニックに陥れます。

みんなでそれを体感したのが、新型コロナ騒動でした。

未知のウイルスへの不安に市民も学者も政府もあおられ、デマが飛び交い、マスクだけでなく、トイレットペーパーやうがい薬の買い占め、自粛警察、特別定額給付金、アベノマスク、Go Toトラベルの大迷走……珍騒動が続出しました。

ビーチで石を積んで遊ぶ子供の手元
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ストレスホルモンがもたらす「心理的視野狭窄」

不安や恐怖に支配されると、私たちは「目の前の心配事」しか見えなくなり、冷静な判断ができない「心理的視野狭窄きょうさくにハマります。

これはストレスホルモン、コルチゾールのしわざです。興奮して頭がまっ白になり、「○○するしかない」と思い込んでしまう。人の意見を冷静に聞いたり、客観的に状況を分析したりすることができなくなるのです。コルチゾールは、血中濃度が高い状態が長く続くと脳を萎縮させてしまうほど強力な物質です。

不安は日々、数限りなくわいてきます。「地震が来るのでは」「クビになるのでは」「老後破産しそう」「嫌われたらどうしよう」「がんになるのでは」……。

芥川龍之介が「将来への唯ぼんやりとした不安」という言葉を遺して自殺したように、どんな不安でも、とらわれてしまうと命を縮めるので要注意です。しかも、不安というものは打ち消そうとしても、グルグル考え続けても、余計にふくれあがるものです。