コロナ禍でメンタルの不調に苦しむ人が増えている。芸能人の自殺が続いたことも大勢の人の心に影響を与えている。どうすれば心を軽くすることができるのか。精神科医で、『感情的にならない本』(新講社ワイド新書)など感情コントロールに関する数々のベストセラーで知られる和田秀樹氏が、感情の整理と健康長寿のコツについてまとめた『感情の整理学』(エクスナレッジ)を上梓。そのエッセンスを特別公開する──。(第3回/全5回)
※本稿は、和田秀樹『感情の整理学』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
「アスペ」「コミュ障」の私に母が放った一言
「秀樹にはサラリーマンは勤まらないから、弁護士とか医者とか、なにか資格を取らないと生きていけないよ」。
私は母親から、いつもそう言われて育ちました。
子ども時代の私は空気が読めず、上級生や教師にも平気で突っかかっていました。友達にも思ったことをズケズケ言ってはイジメられ、仲間はずれにされるけど、まったく懲りずに何度でも同じことをくり返す。
いわゆる「アスペルガー障害(自分の関心、やり方、ペースが絶対で、人と臨機応変に交われないのを特徴とする精神発達の障害、現在は自閉症スペクトラム障害と呼ばれる)」「コミュ障(一方的にしゃべり続ける、人の目を見て話せないなど、人とのやりとりが苦手で、苦痛に感じる)」の典型みたいな子どもでしたから、会社勤めなんてとても無理だ、と母は思ったのでしょう。
「視点転換」と「メタ認知」が人生を変えた
実際、学校でイジメられて人嫌いになり、コミュ障のまま生きていく人も多くいます。しかし私はここ何十年も、精神科医として患者さんと向き合い、いくつかの教育産業を経営し、本を書き、映画監督も続けています。すべて、コミュニケーションが基本の仕事です。
なんとかやってくることができたのは、相手の身になって考える「視点転換」と、自分を客観的に見て修正していく力「メタ認知」のことを、心理学で学んだおかげです。
実は、ほとんどの人は自分が大事、自分が大好き、自分が中心で、相手のことなんてあんまり考えていません。コミュ障の根本原因も「自分にしか関心がないこと」と「視野の狭さ」です。