「不安心理」が広く世の中を覆っています。迷いや葛藤に押しつぶされることなく、「幸せ」を感じながら生きられるようになるにはどうしたら……。脳科学者の中野信子さんは「幸せホルモン」とも呼ばれる「オキシトシン」を上手に活用することを勧めます。セブン-イレブン限定書籍として刊行された『引き寄せる脳 遠ざける脳』(プレジデント社)から、そのコツを紹介します。

※本稿は、中野信子『引き寄せる脳 遠ざける脳』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

「幸せを感じる」ことは、脳と体の相互作用

脳科学の観点で見ると、「幸せを感じる」という営みは、脳と体が絶えず行う相互作用に過ぎません。

そのとき、脳で分泌される神経伝達物質である「オキシトシン」の作用が、幸せの感情をもたらすことが明らかになっています。オキシトシンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、まだそのすべてが解き明かされていない“謎多き物質”ですが、幸せのカギを握るたくさんの可能性があるとわたしは見ています。

そして、人の「幸せ」についての考え方は主観的なものであり、ひとつのものさしで測ることはできません。

見る人から見れば、たとえバカ騒ぎとしか思えない振る舞いでも、当の本人たちは仲間とわいわい騒ぐことで「みんなから愛されて幸せだ」と感じ、それによってオキシトシンがたくさん出る人もいるわけです。

YesとNoのジレンマ
写真=iStock.com/badmanproduction
※写真はイメージです

「幸せのものさし」は人それぞれ

その一方で、ひとりきりの空間で心地良い服を着て、自分の好きな音楽を聴きながらリラックスすることで、オキシトシンが分泌される人もいるでしょう。

人それぞれ好みもちがえば、オキシトシンが出やすい環境もちがうということ。「あの人はいつも“ぼっち”でかわいそう」などと、一概にはいえないわけですね。

幼少期に培われた人間関係のなかで、愛着の対象や自分自身のことをどう思っていたかによって、幸せの価値観もそれぞれちがってくるのです。