コロナ禍でメンタルの不調に苦しむ人が増えている。芸能人の自殺が続いたことも大勢の人の心に影響を与えている。どうすれば心を軽くすることができるのか。精神科医で、『感情的にならない本』(新講社ワイド新書)など感情コントールに関する数々のベストセラーで知られる和田秀樹氏が、感情の整理と健康長寿のコツについてまとめた『感情の整理学』(エクスナレッジ)を上梓。そのエッセンスを特別公開する──。(第4回/全5回)

※本稿は、和田秀樹『感情の整理学』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

人間は他人と比べたがる動物

私たち人間は、「人と比べたがる」動物です。仕事ができる人を見て「とてもかなわない」、ドジな人を見て「自分はまだマシ」と常に反応してしまいます。

そして「劣等感」「コンプレックス」、つまり、「自分は人より劣っている」という感情に悩まされます。頭が悪い、能力がない、背が低い、ブサイク、口ベタ、地方出身など、なんでもその原因になります。

劣等感にとらわれて「どうせなにやってもダメ」と、自分から可能性を閉ざしている人も多いといえます。なんとも残念です。その欠点は、武器になるかもしれないのに。

トップセールスマンに朴訥タイプが多いワケ

「あがり症」に悩んでいて、「克服したい」と相談にきた自動車のセールスマンがいました。いかにも実直な感じですが、質問するたび顔がまっ赤になって、返事もしどろもどろ。要領も悪そうで、「セールスマンとしては、さぞ苦労しているだろうなあ」とこちらが心配になるほどでした。

アジア系ビジネスマン
写真=iStock.com/itakayuki
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ところが周囲からの情報が集まると、彼はなんと1年に100台以上の車を売り上げる、トップセールスマンでした。何度か話を聞くうちに、理由がわかりました。とても誠実で一生懸命であるだけでなく、あがり症である点がかえって顧客に安心感を抱かせていたのです。

セールスマンは口八丁手八丁と思われがちですが、そういうタイプは実際には相手に警戒感を抱かせることが多いものです。そのため、どの業種でも売り上げトップになるのは意外に朴訥な人が多いです。

「あがり症は、あなたの大きな武器だと思いますよ。克服なんかすると強みを失うことになるのでは」と私が言うと、彼は「わかりました。私はこれからも、口ベタであがり症なセールスマンとしてやっていきます」と、ニッコリして帰られました。