「トランプ氏だから仕方がない」などと諦めてはいけない

一方的な“勝利宣言”。これが現職の大統領のやることだろうか。アメリカ国民だけでなく、日本を含む国際社会はあのトランプ氏だから「仕方がない」などと諦めてはならない。このままではアメリカから民主主義の精神が消えてしまう。世界から正義が無くなる。いまこそ、国際社会がトランプ氏の一連の不正を追及すべきである。

繰り返すが、トランプ氏の異常な言動に慣れてはならない。トランプ氏のような人物が民主主義のアメリカの大統領に就いていたこと自体が、おかしいのである。トランプ氏には大統領を辞めてもらうしかない。

これまでの米大統領選では、主要メディアが各州の開票結果をもとにして当選確実の候補者を投開票翌日の未明までに報じ、敗者は速やかに自らの敗北を認めた。この「敗北宣言」はアメリカ国民にとっての新しい政権をスタートさせるための第一歩である。1896年に敗北した民主党のウィリアム・ブライアン候補が、共和党のウィリアム・マッキンリー候補に対して祝電を送ったのが、敗北宣言の始まりだった。

勝った大統領候補は「勝利宣言」を行い、しこりが残らないように選挙戦の幕は閉じられる。

なぜ、トランプ氏はそこまで大統領職にこだわるのか

たとえば、4年前のヒラリー・クリントン候補(民主党)は、投開票翌日の未明にトランプ氏に電話し、敗北をきちんと認めた。実に潔かった。これがアメリカの伝統なのである。

ヒラリー・クリントン
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それがどうだろうか。4年前に大方の予想に反して勝利したトランプ氏は大統領に就任するやいなや、連日ツイッターに「己の正義」を投稿してアメリカ社会を分断の渦に巻き込んだ。トランプ氏のこれまでの言動は大統領として恥ずべきである。

今回の選挙では、トランプ氏は敗北が濃厚になっても負けを認めようとはせず、根拠も示さずに「開票作業の透明性が確保されていない」と主張している。訴訟という手段まで持ち出して、大統領職にしがみ付こうとしている。なぜ、トランプ氏はそこまで大統領職にこだわるのか。

理由は簡単だ。大統領を辞めた途端に脱税などいくつもの容疑で刑事訴追される可能性が高いからだ。大統領に就いている限り、その身は大統領特権で守られている。

新型コロナ禍で自身の不動産業が落ち込み、トランプ氏には500億円以上の借金があるとされる。これも大統領特権で返済が猶予されているが、辞めた途端に金策に走らなければならないだろう。我が身を守るために優秀な弁護人を雇う資金もない。それだけにいまのトランプ氏は大統領職にしがみ付くしかないのである。