支持層と反対派の対立は、死者が出てもおかしくない異常な事態

読売社説は続けてこう指摘する。

「今回の選挙は、トランプ氏に対する事実上の信任投票だった」
「この4年間、トランプ氏はツイッターによる宣伝活動を重視し、『米国を再び偉大にする』というスローガンの実現を強調してきた。民主党や、自らに批判的なメディアへの敵意を煽り、熱狂的支持につなげる独特の手法だ」
「その結果、支持層と反対派の溝は、かつてなく深まった。選挙後の暴動や騒乱を恐れて、首都ワシントンをはじめ各地で警備体制が強められているのは、民主主義の大国とは思えない事態である」

「支持層と反対派の溝」、つまり分断である。大統領選にからんでトランプ派とバイデン派が激しく対立してすでにけが人も出ている。穏健な民主党支持層のなかにも拳銃を入手する人々がいるという。死者が出てもおかしくない異常な事態である。

読売社説は最後にこう訴えている。

「コロナ対策や経済の再生策など、喫緊の課題は山積している。不毛な法廷闘争で時間を空費している余裕はない。敗者は潔く結果を受け入れねばならない」

トランプ氏ほど、「潔い」という言葉から遠い人物はいない。

選挙中に暴徒から身を守るために銃が必要になっている

11月5日付の東京新聞は「米大統領選開票 静かに見守るべきだ」との見出しを付け、こう指摘している。

「暴動と略奪を懸念してショーウインドーを板で覆った繁華街はゴーストタウンと化した」
「護身用に購入する人が急増し、銃は記録的な売れ行きだ。連邦捜査局(FBI)が十月、銃購入希望者の身元調査をした件数は三百三十万件を超え、この数年間の平均より百万件ほど多かった。不穏な空気が漂う中での選挙だった」

「ゴーストタウン」に「拳銃」。早打ちガンマンが活躍する西部劇ならともかく、選挙中に暴徒から身を守るために銃が必要になる社会はやはり異様である。

東京社説は書く。

「社会の物々しさには分断が下地にある。社会分断を深めたのは、立場や意見が異なる者を敵と見なして攻撃するトランプ氏だ」
「トランプ氏の信任投票となった大統領選は有権者の関心が高く、記録的な投票率になるのは確実だ。対立と破壊を繰り返したトランプ政治が続けば、米社会は大きく変質する。それを是とするのか非とするのか。多くの有権者が選挙の重要性を理解したのだろう」

どう考えてもいまのアメリカ社会の分断を深めたのは、トランプ政治である。アメリカ社会を再び、トランプ氏に渡してはならない。