香港人は中国人を見下している
もう1つは、一般の中国人民の立場から言えば、香港人があれだけ自由と権利を求めていることが納得いかない。一般の人たちは、これまで「香港人は中国人を見下している」と感じてきたんです。経済的にも大陸より10倍くらい豊かで、英語も話せる。「香港と大陸とは違うんだ」という意識を香港人自身も持っていましたが、大陸側ではそれに対する反感が強かった。
【渡瀬】大陸の人は香港人が嫌いですからね。
【中川】一国二制度というときに彼ら人民は「一国」のほうに重きを置きますから、これまで香港人は散々金儲けをして自由を謳歌してきた、それなのに「一国」になってなお、文句を言うのか、という大陸の14億人のエネルギーを中央が無視できるはずがない。
厳しいことを言えば、香港が中国の民主化の風を止めた面もある。中国では権力とうまくやることが賢いという感覚ですから、「散々拝金主義で儲けてきたのに、結局は上とうまくやることもできない」というわけです。しかも中国国内の格差是正という経済的な方針の中で、地盤沈下してきた香港人側にも「あんな貧しい奴らと一緒になってしまうのか」という感覚があり、これが香港デモや暴動の下地になっています。根っこのところは経済の話なのです。
(構成=梶原麻衣子 写真=Getty Images)