正攻法2「ゴマすり名人」になれ

ある著名な経営者が「私が絶対やらなかったのは上司のご機嫌取りとゴマすり」と述懐しているほど、「ゴマすり」はひどく嫌われる。ましてやリストラの噂が出始めたときにこれ見よがしにやることは本当に効果があるのだろうか?

もともと仕事ができる人がやれば、圧倒的な効果が発揮できる。できるできないの線上にある人は、使うことにより安全圏に押し上げてくれる。問題は仕事でまったく評価されていない人はどうなのか。「ゴマすり」だけでは十分な効果は見込めない。他のワザ(例えば、後述する「火事場の馬鹿力」とか「意外性の法則」)を併用することで初めて生きてくるだろう。

なぜ「ゴマすり」が効くのか。それは部下の立場ではやるのは嫌だが、上司としては「ゴマすり」をされることは好きで好きで、嬉しくて嬉しくて仕方がないのだ。ならば、仕事には手を抜いても、絶対「ゴマすり」に手を抜いてはならない。ヨイショする部下は、上司にとって「い奴」となる。これはサラリーマン社会の通例と知ってほしい。「愛い奴」は成果が低くても、いろいろ理由をこじつけて「彼のことだ、しょうがないか」と思ったり、少しの成果も大きく上げているように見えるものだ。

リストラ候補の選定では上司の発言力、評価を重視する会社が圧倒的に多い。人事部門で一方的に決めるときも所属部門の管理職の考えに反して決めることはない。この場合、上司の判断は好き嫌いで決まる。好き嫌いは仕事ができるできないで決まるのではない。「馬が合うとか、虫が好く」と同じように主観的な判断によるものだから、「ゴマすり」が大きな要素になることが多い。

「ゴマすり」は好きでない人が多いだろうが、会社の中では有効に働くのは誰しも認めるところだ。実力のない人がゴマすりだけで出世できるほど会社は甘くはないが、長くぶら下がりを続けるためには必要条件の一つであることは間違いない。「ゴマすり」をされる上司がいい気持ちになるのは事実だし、その上司がリストラ候補を決めるキーマンであるからには、「ゴマすり」を敬遠することは普通の人にはもったいなくてできないだろう。「どうぞ批判してくれ」と言う上司ほど、欲しているのは賞賛である。

上司と会話するビジネスマン
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裏ワザ1「火事場の馬鹿力」を発揮しろ

人間はふだん最大能力の20~30%しか使っていない。そのためか火事場で火が間近に迫っていると体重の5倍の荷物が担げるのだとか。「私は、これだけしかできない」と言っていた人ほど、リストラという人生の危難に際して能力のノリ(余裕)が十分にあり、伸びしろが大きいだろう。「火事場の馬鹿力」が期待できるのだ。このとき必要なのは、「できる」「やれる」というプラス思考だ。

長いサラリーマン人生、自分なりのペースを心得て他人に構わず走るのが完走するコツであるが、全力疾走しなければならないときはしなければ元も子もないことになってしまう。

職場の同僚からは、「いまさら」とひんしゅくを買うかもしれない。しかし「仕事を頑張り成果を出す」ことは、付け焼刃であったとしても上司の評価を急上昇させるには効果絶大。数カ月やれば結果が出る。リストラが一段落すれば、また元のペースに戻ればいいのだ。