三菱自動車、ジェットスター、東芝など、9月に入って大手企業が次々に人員整理を発表している。自分の会社でリストラが始まったとき、生き残るにはどうすればいいのか。リストラ評論家の砂山擴三郎氏が「2つの正攻法と4つの裏ワザ」をアドバイスする――。

※本稿は、砂山擴三郎『今どきサラリーマンのためのリストラされずに会社にぶら下がる方法』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。

人事選考のため、マネージャまたはceoがアイデアを書き出す
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「うちの会社、ヤバいかも」と感じたら、すぐ対策

必ず前兆があるのがリストラの大きな特徴で、「突然」というのは「前兆に気がつかなかった」だけの話なのだ。この前兆の段階で人に先んじて対策を講じていくことが、リストラの魔の手から逃れる決め手になることが多い。

退職勧奨をされる前に、リストラ候補になることをなんとしてでも阻止したい。「もう遅いのでは」「こんなことやっても無駄では」「どうせ俺なんかリストラされるに決まっている」と思ったときはもう魔の手につかまっていると思ったほうがよい。マイナス思考では人生何をしてもどこに行ってもうまくいくはずがない。

気持ちを萎えさせたり、仕方ないかと思わせたりする情報が意図的に会社から流されることが多い。前兆の段階で社員の様子を見て反応を探るのは、この時期の手段だ。「もうやってられない、俺、真っ先に辞めるよ」と言いふらす輩が出てくるのもこの時期だ。

嵐の海を小舟で漕ぎ出すときの戦術に「逆櫓さかろ」がある。源平の屋島の戦いのとき、梶原景時が義経に進言したことで知られているが、「船のへさきにも櫓をつけて、どの方向にもたやすく転換できるようにする」方策だ。魔の手を逃れるためには、正攻法で前に進み、様子を見ながらうまくいかないことに備えて裏技も準備しておくのだ。

以下、正攻法を2つと裏ワザを4つ説明する。最後に、それらを試みる順番を提示するので参照してほしい。

正攻法1「天の声」を利用する

上層部から人事担当者や上司に飛ぶ指示や依頼が、いわゆる「天の声」である。リストラ候補にならないように、会社の幹部にお願いしておくのだ。キャリアコンサルタントとして多くの企業のリストラに携わってきた筆者が見た、天の声が降ってきたケースを紹介する。

[大手損保会社A社でのリストラ人選会議状況]

人事所管専務、人事部門担当役員、人事部長以下人事部役職者全員によるリストラ候補人選会議が朝9時から特別会議室で淡々と進められていた。人事部で作成した45歳以上基幹職450名全員の学歴・入社年次・年齢・所属部署などの基礎データに過去5年間の賞与・定昇査定、賞罰、特記事項がリストアップされ、その一覧表を出席者に配布。

一人一人を人事課長が説明、A・B・Cに分けられていった。Aは優秀人材、Bは普通人材で共に残留させ、Cは退職勧奨組になる。夕方近くほぼ9割程度が決まり、あと一息という段階になった。人事課長の疲れた声が室内に響いている。

「山口洋二、年齢・査定・持ち点ともオールバツ、C決定です」
「ちょっと待ってくれよ。山口君はね、君たち知らないだろうが15年前のタイの○○社買収の立役者で社長も評価しているんだよ」

そのとき、専務の野太い声が聞こえた。滅多に発言しない専務の一言は何を意味するのか、みんなは瞬時に理解した。

「訂正します、山口洋二、功績配慮でB決定とします」と人事部長が事務的に言い直した。

山口氏は1週間前、大学陸上部の先輩である人事所管専務の自宅を妻と共に訪問し懇願した。その成果がストレートにあらわれた瞬間だった。

「天の声」はきわめて効果的だ。リストラが職場の話題になるころ、必ずそれに頼ろうとする輩が出てくる。リストラは生きるか死ぬかの「椅子取りゲーム」と考えた場合、「お偉いさんに頼むことを潔しとしない」か、「溺れる者は藁をもつかむ」か、自然と答えは決まってくる。自分の生き残りを画策することは、親しい仲間を裏切ることになるかもしれないと人によっては悩む。だが、自分と家族の生活がかかっていることを考えたい。頼むのは早ければ早いほうがよい。