完成まで5年超を費やした大作だが…

ディズニーの新作映画「ムーラン」が、コロナ禍の影響で公開が延期となりながら、どうにか日の目を見ることとなった。しかし、世界各国で中国へのバッシングが高まる中、同作品が思わぬところで波紋を広げている。

米ウォルト・ディズニーの新作映画「ムーラン」の広告=2020年9月8日、タイ・バンコク
写真=AFP/時事通信フォト
米ウォルト・ディズニーの新作映画「ムーラン」の広告=2020年9月8日、タイ・バンコク

「ムーラン」は、中国の人々の間で広く知られる昔話だ。ディズニーは1998年、アニメ版「ムーラン」で大成功を収めており、今回は実写版で二匹目のどじょうを狙う格好となっている。

自国の存亡に関わる戦いを前に、一家から男性がひとりずつ徴兵を迫られる中、老いた父の代わりに娘ムーランが男と偽って軍に向かうというストーリーだ。京劇の題材に取り入れられているほか、絵本や小説にもなっており、中国の人ならどこかで触れたことのある物語と言えようか。

製作費2億ドル(約210億円)、構想から完成まで5年以上をかけた大作はもともと米国などで3月、日本では4月に公開を予定していたが、コロナ禍の影響を真正面から受け、公開を見送った。

9月4日、ようやくリリースとなったが、欧米、日本など主要マーケットで同社の公式動画配信サービス「ディズニープラス」での有料視聴だけという「片肺運転」による見切り発車となった。しかも、本場の中国では劇場公開を行っているにもかかわらず、興行成績は振るわないという。日本では現在、劇場公開の見込みは付いていない。

主役が「香港警察を支持する」と発言し炎上

動画配信に絞った「ムーラン」だが、コロナによる巣ごもり需要を狙ったものの、「ディズニープラス」のサブスク月額料金(日本では700円+税)だけでなく、プレミアアクセス料金(2980円+税)が別途かかる。こうした値立てに抵抗を感じる人も少なくない。

だが、その公開方法以上に論議の的となったのは、ヒロインを演じるリウ・イーフェイ(劉亦菲)が昨年8月、香港で民主派による逃亡犯条例改正案に反対するデモが激化する中、香港警察を支持する発言を行ったことだ。

当時の報道によると、リウは中国版ツイッター「ウェイボー」に「香港警察を支持する。皆で私を批判しても構わない。香港にとって残念なことだ」と書き込んでいたという(CNN日本語版)。