リウ本人は両親ともに中国人だが、すでに米国籍を取得している。しかし、香港の自由と民主化を願う声が米国をはじめとする各国で上がる中での発言だったことから、リウへのバッシングが激化。映画「ムーラン」を観るのはやめようと訴える「#BoycottMulan」をはじめとするハッシュタグがあっという間に拡散した。

配給するディズニーとしては頭を抱える問題になった格好だが、トラブルはこれにとどまらなかった。住民の強制収容が指摘されている新疆ウイグル自治区で撮影していたことが判明。「ムーラン」のエンドロールでは、「新疆自治政府の治安機関に謝意を表明している(BBC日本語版、原文ママ)」文字が映し出されており、「ディズニーは中国の少数民族迫害を容認するのか」と怒りの火の手がさらに広がることとなった。

国のプロパガンダ機関が撮影に関与か

その問題が指摘されているエンドロールについて、気になる部分を改めて確認してみよう。新疆ウイグル自治区・トルファン(吐魯番)市にある中国政府の機関名が並ぶが、問題視されるのは以下の3つだ。

・「Publicity Department of CPC(the Chinese Communist Party’s)Xinjiang Uighur Autonomous Region Committee」(=中国共産党新疆ウイグル自治区宣伝部……自治区にある共産党の広報・宣伝機関。いわゆる「プロパガンダ」を受け持つ組織)
・「Publicity Department of CPC Turpan Municipal Committee」(=中国共産党トルファン市宣伝部……トルファン市にある共産党の宣伝機関)
・Turpan Municipal Bureau of Public Security(=トルファン市公安局……同市にある警察機関。地元住民の「治安維持」にかかる任務を持つ)

BBC(9月8日)によると、「宣伝部」は新疆で中国のプロパガンダ政策を任されている部署で、収容施設の建設や、施設内の警備員の雇用も行っているという。さらに「公安局」については「ウイグル人の『再教育』を行っている部署」と具体的に示している。

「ムーラン」のエンドロールに示された新疆について、実際に映像からその文字を確認した英国在住の中華系女性ジャーナリストの呉志麗さんは、こうした状況について、

「(新疆は)文化的ジェノサイド(大量虐殺)が行われている場所だ。ディズニーは新疆で広範囲な撮影を行ったが、字幕では『中国北西部』と表記されていた」とツイッターを通じて指摘している。