新疆ウイグル自治区で何が起きているのか

最近の中国に絡む問題として、香港の国家安全法の導入と並んで議論の的になるのが「ウイグル少数民族への弾圧問題」だろう。かの地ではいったい何が起きているのか。

新疆ウイグル自治区は中国西北部に位置し、中国国土の約6分の1を占める(日本の約4.5倍)。北側は旧ソ連の中央アジア諸国と、南西側はパキスタンが実効支配するカシミール地方と国境を接する。北側は天山山脈が、パキスタンとの国境地域にはカラコルム山脈があり、自治区の真ん中に当たる部分には日本の8割分の面積を持つタクラマカン砂漠がある。

この地に住むいわゆるウイグル族はトルコ人と同じチュルク系に属し、イスラム教を信仰する。顔つきは中東系で、彫りの深い青い目をしているのが特徴だ。人口は2500万人で、うち1000万人ほどがウイグル族だ。イスラム教を信仰する人々が住む新疆は、漢民族が多く住む中国や別の地域とは打って変わって「中東の風情」が一気に高まる。1980年代にNHKが放映した紀行番組「シルクロード」を通じて、砂漠の民・ウイグル族というイメージをいまだに持っている人も多いことだろう。

「ムーラン」の撮影場所となったトルファンも、そうしたシルクロードのファンや中国旅行フリークにはよく知られた地名だ。孫悟空が出てくる西遊記の舞台にもなっている赤い泥岩の山「火焔山」はトルファンの名所の一つとなっている。

9.11以降、ウイグル族への締めつけが激化

そうした平和的なイメージの一方で、中国中央政府による「トラブル防止と称した少数民族への締め付け」という問題が長年にわたって頭をもたげてくる。

この地区は期間が短かったとはいえ、独立国となった歴史があるほか、いわゆる漢民族のものとは異なる固有の文化や異なる宗教を持つ民族としてアイデンティティーが形成されている。

中央政府は、「自分たちとは異なる文化や民族によって自国の統合が脅かされること」を嫌う傾向が強く、ウイグル族をはじめとするイスラム教を信仰する人々への舵取りが難しいとされてきた。

折しも、2001年のニューヨークでの同時多発テロ以降、過激なイスラム教徒によるテロ行為が世界各地で起こってきた。そうした中、中国政府にとっては「国家の安定」を目的に、異教徒であるウイグル族たちを取り締まるという名目が期せずして生まれたことになる。実際に2009年には自治区首府のウルムチで大規模な騒乱が起き、多数の死者が出る事態となった。さらには、2014年にもウルムチ駅で、習近平国家主席の視察直後に爆発が起こる事件があり、こうした経緯から「厳しい監視社会」が新疆に生まれることになってしまった。