そうはいっても、ドイツにも色んな家庭があり、このようにオープンな性教育ができる家庭ばかりではありません。

親自身に恥ずかしいという思いがあったり、子供からの性がらみの質問に対して、どう答えたら良いのか分からず気まずさやためらいを感じる親はドイツでも少なくありません。また「親と性の話をしたいとは思わない」と思春期の子供自身が親との会話を拒否するケースも多く見られます。

家庭に任せきりにしないドイツの性教育

そんな時に頼りになるのが学校での性教育です。

州によって多少の違いはありますが、例えばハンブルクのStadtteilschule Wilhelmsburgという学校ではある週を「プロジェクト・ウィーク」と名付け、6年生を対象に「僕・私の身体がどう変わっていくか」「恋、愛、性欲について」「避妊と性行為」をテーマに一週間かけてじっくり教えています。

このプロジェクト・ウィークは先生がPro Familiaという若者の性教育に取り組んでいる団体で事前に講習を受けた上で行われました。

実はドイツでは学校での性教育が大事だとされていながら、先生が「生徒への性教育のしかた」について大学で学ぶ時間は限られており十分な時間が確保されていません。

そのため先生自身が性教育を行う場合、事前に前述のPro Familiaのような場でレクチャーを受けることもありますが、時間などの関係でそれがままならない場合、または先生自身に性教育をする上での自信が足りない場合などは、外部から専門家を呼び、ワークショップという形で性教育をする場合もあります。

ケルンにあるギムナジウムでは9年生(日本でいう中学3年生)の生徒たちを対象にワークショップを行いました。その期間中「避妊とセックスについて」(ドイツの性教育では「セックス」は必ず「避妊」とセットで教えられています)、緊急避妊薬について、性病の防ぎ方、LGBTや第三の性という内容のほか、「日常生活の中で自分がどこを触られたら不愉快か」「性行為の同意や拒否」についても勉強します。

「生徒が知りたいことを全部教える」ドイツの学校の性教育

ただ勉強といっても、単に「情報として学ぶ」だけではなく、「考える能力」も問われる「参加型のスタイル」となっており、ワークショップの最後には「携帯電話を使って自分で性教育の動画を作る」というプログラムも組み込まれています。

ドイツでは生徒同士で会話をしながら性教育について学ぶ参加型のスタイルが適切だとされています。