バッシング、問題視、教員処分……自粛が続くニッポンの教育現場
日本では1972年に日本性教育協会が設立されてから、それまで行われてきた「純潔教育」を見直し、性にまつわる現実的な問題を科学的に解明し子供たちに教育していこう、という動きがありました。
例えばそれまでは思春期の男子の成長について「声変わりがあること」を教えるのにとどめていましたが「精通」についても教えるようになるなどオープンな性教育に向かって歩み始めていました。
ところが今から約20年前の2002年に事態が変わります。東京日野市の七生養護学校(当時)が、知的障害の子供が性被害に遭っても気付くことができなかったことを受け、今後の防止のために、男性器と女性器の名称を織り込んだ歌を歌ったり、生徒に男と女の性器のついている人形を使って性教育を行っていたところ、これがバッシングの対象となってしまいます。
校長会などでは先進的で分かりやすい試みだとして高く評価されていましたが、東京都議員が「行き過ぎた性教育ではないのか」と問題視し、これが騒ぎとなり教師が処分される事態に発展してしまいました。
その約10年後の2013年に結審した裁判では都議側の敗訴が確定しています。ただこの騒動を受け教育界で性教育は「触れてはいけないもの」という扱いになってしまいました。
2018年には東京の足立区立中学校の性教育の授業で「性交」「避妊」という言葉が使われていたことがまたもや都議から問題視され、「性については教育機関であまり詳細に話さないほうがよい」という自粛ムードが今に至るまで続いているようです。
性教育のスタートは家庭で読む「絵本」から
ドイツは性にオープンなお国柄です。そのため親が子供に読んであげる絵本の中に性教育の本が含まれていることも多いです。たとえば『Vom Liebhaben und Kinderkriegen: Mein erstes Aufklärungsbuch』という絵本では、男女の性行為から出産の絵まで何一つ隠すことなく可愛い絵で描かれています。
思春期になった子供が性や異性に関心を持ち始めると、親が子供にコンドームを持たせることもあります。その際に親が子供を茶化すような雰囲気は必ずしもなく、「品質のために冬はマイナスの気温になる車などにコンドームを置かないこと」「コンドームが破れないために、鍵など尖ったものと一緒にポケットに入れないこと」まで淡々と子供にレクチャーする親もいます。