「株式投資か、金投資か」で考えるのは誤り

今後の動きが気になるが、日本人投資家の皆さんに言いたいのは、「株式投資か、金投資か」で考えるのはこれからの時代は間違っている、ということだ。

事実、これまで金に否定的な見方をしてきた米国の著名投資家や学者などが、最近になってこぞって金投資の重要性を説くようになっている

たとえば8月に世界一の株式投資家であるウォーレン・バフェット氏が、カナダの産金会社バリックゴールド株を購入したことが明らかになった。これまで「金投資は無意味」と公言してきたバフェット氏が、金価格の上昇が最大の収益源になる産金会社の株式を購入したのである。

「変節」というより、これは「時代の変化への対応」であろう。

金をポートフォリオに加える世界の重鎮たち

市場の重鎮たちが金投資に関する見方や考え方を大きく変えているのが最近の「世界の潮流」である。これは意外に日本では知られていないようだ。

米国株の強気派として広く知られるジェレミー・シーゲル教授も、金に対するスタンスを明確に変えた一人だ。

シーゲル教授は、200年以上にわたる米国株の長期リターンを研究し、株式の長期投資がもっとも儲かるとの結論に至ったとして、かねて株式投資の優位性を主張してきた。

「人々が努力する限り、それは企業活動にとってプラスとなり、そのプラスは企業の利益を生み出し、その利益は株価を押し上げる」
「債券や金や不動産では、この人々の夢や希望を追うための努力が価格に反映されるということは少ない。資本主義社会において、株式会社とは人々の努力を反映する仕組みである」

その根拠として、1802年に米国株に1ドルを投資していれば、現時点で150万ドルになり、217年間で米国株はインフレ控除後で平均6.7%上昇。一方、米国長期債に1ドル投資していれば、現在価値は2000ドル、金は3.5ドル程度にすぎない。つまり、国債と金の場合の実質利回りは、年間平均でそれぞれ3.5%と0.6%でしかないとデータで示したのである。