自説を現実に合わせてカスタマイズし、行動変容を恐れるな

金投資を否定してきた世界の重鎮たちが、これまでの自説を撤回し、柔軟に金投資の重要性を説き始めている。「株式投資か、金投資か」ではなく、「金をポートフォリオに取り込め」と言っているのである。

私たちは、常に現実を冷徹に見つめ、変化することをいとわない彼ら本物の金融のプロの姿にこそ学ぶべきだろう。凝り固まったものの見方でいると、いまのような歴史上経験のない、大規模な金融緩和政策が取られている中では、全く対応ができない。思考と行動の柔軟さを持ち合わせていなければ、これからの時代は生き残れない。

将来のことは誰にもわからない。しかも、いまは「過去にないこと」が起きており、対応を誤ると取り返しのつかない失敗につながる可能性が大きい。従来の自説にこだわり続け、最終的に損失をかぶるのは自分自身である。

景気の下落で矢印が地面に突き刺さる
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金価格が史上最高値を更新したのは、歴史の転換点の象徴とも言えるだろう。過去のデータを重視しながらも、現在の経済環境や市場動向に柔軟に対処できる者だけが生き残れるのが現代の社会である。

行きすぎた金融緩和が行きづまることは確実

ただ、これだけは言える。FRBが長期的な継続を半ばコミットしたかのような緩和的な金融政策は、いずれ崩壊に至る

金融政策が成功裏に終わったためしはない。現在のような行き過ぎた緩和は、株価を支えざるを得ない環境下では、もはや止めることができない。止めることができるのは、経済が新型コロナウイルスの感染拡大前の水準をはるかに上回る状態を回復し、株価も安定して推移し、さらにインフレ率が2%を超えて安定的に一定期間推移するようになってからである。

しかし、そのような平和な状況が訪れる前に、異常な緩和政策のツケで株価はいずれ崩壊するだろう。それは、今も昔も同じである。