ソフトバンクの投資戦略は「一発勝負」か?

市場では、ソフトバンクグループ(SBG)の上場株投資が大きな話題になった。英フィナンシャル・タイムズによると、SBGは米国のオプション取引で40億ドル(約4200億円)の含み益を抱えていると報じられている。また、その規模の大きさから、SBGの動向が株式市場に影響を与える可能性があるとの指摘もある。

SBGがどのような取引を行っているかは全くわからないが、報道によると、「コール(買う権利)」と呼ばれるオプションで約300億ドルの額面に相当するポジションを保有しているようである。SBGはこれまで「ビジョン・ファンド」を通じて主に新興企業に投資してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な株価急落もあり、これまでとは異なる戦略を取り始めたのだろう。

市場環境が変われば、柔軟に対応することは当然であり、それ自体に問題があるとは思わない。しかし、投資対象がオプション取引であるとすれば、SBGの「短期的な収益を狙うだけの取引は実行していない」という説明にかなり無理があるように思われる。

オプション取引は短期間で大きな利益を得るためのツールであり、さらにいえば、コールオプションを価格変動リスクのヘッジに使うという発想は基本的に理解しがたい。基本的には、短期間での株価上昇による値上がり益を享受するために、株式よりもレバレッジが効いたオプションを利用したと考えるのが妥当であろう。

実際のポジション状況がわからない中での推測には意味がないが、報道の内容を見る限り、ビジョン・ファンドがうまく機能しない中、バフェット氏らのような時代の変化への対応というより、「一発勝負」に出た感が強いという印象だ。

往々にしてこのような出来事が報じられると、市場が末期的な状況にあることが少なくない。これまでの損失を挽回しようと最後の上昇に賭け、一発勝負に出る投資家が出始めるのは、大相場の最終局面で見られる行為である。

来る「大災害」の後は、金がポートフォリオを守ってくれる

投資家にとって重要なことは、過去の歴史を理解しながらも、目の前に起きていることに柔軟に対処し、より長期的な目線で判断することである。

私が尊敬する世界一の投機家であるジョージ・ソロス氏は、「市場は常に間違っている」とするが、多くのケースで正しいことも少なくない。しかし、重要な局面で結局は間違うため、バブルが崩壊し、大損害が発生するのである。

いまの米国株の上昇も、おおむね正しい動きなのかもしれないが、最終的には大災害で終わるだろう。そのような動きになることも十分理解したうえで、いまの上昇相場に乗ることは間違ってはいない。しかし、相場から降りるタイミングを間違えてはいけない

そして、相場の変化の兆候は、金価格に表れる。大災害の後は、金がポートフォリオを守ってくれるだろう。これまでの市場の荒波を乗り越えてきた重鎮たちが、いまになってなぜ金投資にお墨付きを与えているのかをよく理解しておきたい。

紙幅が尽きた。金投資や金に関する詳しい解説を知りたい方は、拙著『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)をぜひお読みいただければと思う。今後の世界情勢や米ドルの動向、さらには米中対立の結末や金価格の将来見通しなどを知ることができるだろう。

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