文在寅の「二枚舌外交」は矛盾だらけ

文大統領は米中対立にも対応しなければならない。米中対立の先鋭化によって中国と距離をとる国が増えた。中国は国際社会から孤立し始めている。それを食い止めるために、中国は韓国に習氏の早期訪韓を提案した。

大統領に就任して以来、経済運営面で中国との関係を重視してきた文氏は、表向きその案を歓迎した。歓迎した以上、韓国は中国に返答を用意しなければならない。

問題は、現在の国際情勢が、韓国の対中関係強化を支持すると考えられないことだ。ベトナムやフィリピンなどが中国の海洋進出によって自国の領海を侵害されたと国際世論に訴えている。米国は南シナ海における中国の領有権主張は国際法違反であると明確な立場を表明した。韓国は米国の同盟国であり、米国の意向に背を向けることはできない。

安全保障は国家の安定にかかわる問題だ。辞任を表明した安倍首相が一貫してトランプ大統領との関係維持に注力したのは、米国との安全保障関係の強化がわが国の国力の安定と強化に欠かせないとの認識があったからだ。そうした明確な政策方針が、わが国が中国の人権問題や海洋進出に対して国際世論と協調して懸念を表明することにつながった。

しかし、文大統領は安全保障を米国との同盟関係に依存しているにもかかわらず、経済面での関係強化のために中国に秋波を送った。米国は韓国が中国に近づくことを容認しない。それは、9月2日にスティーブン・ビーガン国務副長官が韓国との持続的な関係の重要性を文政権に伝えたことから確認できる。米国は一貫して韓国に自陣にとどまり、国際連携網に加わるよう圧力をかけている。

現在の状況は、米中両方から利得を手に入れようと「二枚舌」を使った文氏の政策の矛盾を露呈している。米中板挟みの中で、文氏が国際社会からのさらなる孤立を回避できるか否か、先行きは不透明だ。その状況への対応にも文氏は時間を割かなければならず、わが国への対応に手が回っていないだろう。

韓国人の7割超が北朝鮮の独裁体制に懸念

今後、文大統領にとって、わが国への批判や強硬姿勢を強める可能性がある。安倍首相の辞任が日韓関係を変化させるとは考えづらい。

文大統領にとって、北朝鮮との宥和・統一を目指す政策と、歴史問題などでわが国への批判的な姿勢を強める政策は、2つの看板政策だ。

6月以降、南北の宥和策は難航した。独裁体制の維持を目指す金一族が核の保有をあきらめるとは考えらず、米国は文大統領の南北融和策により厳しい姿勢をとるだろう。KBS(韓国放送公社)の世論調査では7割超が北朝鮮の独裁体制に懸念を抱いている。

北朝鮮政策の行き詰まりによって、わが国への批判的な姿勢を強める以外に、文氏が世論の後押しを狙うことは難しくなっているといっても過言ではない。

8月末まで2週間続けて文氏の支持率は上昇し、不支持の割合を上回った。しかし、大規模デモの実施などをもとに考えると、文氏を取り巻く社会心理は額面通りではない。データが示す以上に、文氏の政権基盤は不安定に見える。

文氏は世論の批判が自らに向かうのを避けるため、反日強硬政策をより重視しわが国への批判を一段と強める可能性がある。元徴用工問題に関して文政権は司法判断に介入しない立場だ。わが国企業の資産が韓国の司法判断によって売却され、実害が発生する展開は排除できない。