文在寅政権への5万人規模の反対デモ

現在、文政権はわが国よりも、国内世論への対応を優先しなければならない状況だ。特に、8月15日の「光復節」の記念日に、ソウル中心部で文政権を批判する5万人規模のデモが実行されたことは無視できない。その背景を考えると、経済運営や新型コロナウイルスへの対応などに関して、世論がかなりの不満を抱いていることが確認できる。

韓国銀行によると、4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前期比3.2%のマイナス成長だった。ざっくり、GDPとは、企業の収益と給料の合計額だ。GDPがマイナスであることは、働く人々が受け取る給料の減少を意味する。

これまで韓国経済の成長を支えてきた輸出が減少傾向にある。輸出減少は、企業の収益と財務内容を悪化させ設備投資も減少した。

また、コロナショックの影響によって韓国の非製造業の業況は厳しい。中小の事業者を中心に事業継続に行き詰まる企業が増え、倒産件数が増加している。若年層や非正規雇用者が安定した所得環境を手に入れることは追加的に難しくなっている。現状への不満と先行きへの不安の高まりは文政権への反対デモの一因だ。

「ソウルのマンションは上がる」という思い込み

また、不動産価格の上昇も深刻だ。韓国の経済の専門家の間では、不動産価格高騰の責任は文政権にあるとの指摘が多い。現状、世界的な低金利環境が不動産市場への資金流入を支えており、「ソウルのマンションは上がる」という主要投資家の“思い込み”はかなり強い。

文氏が政策によって不動産価格の高騰を抑えることは容易ではない。所得・雇用環境への不安が高まる中、住宅ローン負担や賃料の増加は家計の債務返済負担を増大させ、追加的に消費者心理を圧迫している。

文氏は財政政策を用いた雇用創出や、規制強化による不動産価格の鎮静化を優先している。また、大規模デモは新型コロナウイルスの感染再拡大の一因になり、文氏は感染食い止めにも対応しなければならない。その一方、文政権の医療政策に研修医などが反発し、医師のストライキが起きた。文氏にとって内政の立て直しは喫緊の課題だ。