あのラグビー選手たちを育てた菅平に人がいない

菅平の中心、T字路の交差点
撮影=研壁秀俊
菅平の中心、T字路の交差点

長野県上田市北部の菅平高原には毎夏、小学生のラグビースクールから、高校、大学、トップリーグのチームまで、全国から年代・カテゴリーを問わず合宿、練習試合を行うために集まる。そのチーム数は800以上、100面を超えるグラウンドでは、夏の間、朝から日が暮れるまで常にどこかで試合とハードな練習が行われている。標高1500メートルほどの準高地ゆえのトレーニング環境のよさに加え、練習試合の対戦相手に困らないことが全国からチームが集まる要因になっている。ラグビーW杯で日本中を熱狂させたマイケル・リーチや、フランスプロリーグに挑戦中の松島幸太郎、ゴールキックで人気者になった五郎丸歩や、「ノーサイドゲーム」で俳優デビューも果たした廣瀬俊朗などもこの地で合宿を経験し世界に羽ばたいていった。

ラグビーショップも閉店中だ

例年は常にラガーマンが集まるが今年はその姿がない
撮影=研壁秀俊
例年は常にラガーマンが集まるが今年はその姿がない

菅平では例年夏の期間は、町を歩けば短パン姿のラグビー部員と鉢合わせる。ラグビー用品を販売するショップや限定Tシャツを販売店も開店する。メインストリートに構えるセブン-イレブンには夕食後の時間になると大男たちが大挙して押し寄せる。そのため、品ぞろえもプロテインが山と積まれ、業務用冷凍庫には予約制の氷がぎっちり。肌着のサイズもLLからがメインだ。昨年のW杯の盛り上がりを受け、今年はファンも多く訪れるはずだった。

しかし、今年の菅平には、風物詩のはずの大柄の選手たちの姿はない。ラグビーショップは開店せず、お土産用のTシャツも買えない。新型コロナウイルスの影響が、菅平を直撃したのだ。

ラグビートップリーグはいち早く全日程中止を決めた

感染拡大防止のために、あらゆるスポーツが練習を抑制、交流試合を自粛した。スポーツの中でもラグビーはとくにコンタクトの激しいスポーツで、試合どころか練習すらためらわれる状況だった。実際、トップリーグの全日程中止の決断は3月23日、プロ野球やサッカー・Jリーグよりも早かった。ましてや、合宿ともなれば県境を越えた移動にもなり、クラスターを発生させる恐れもある。毎年恒例の夏合宿を取りやめる学校、チームが続出した。