全国から強豪校が集結する夏の菅平
元ラグビー日本代表キャプテン・廣瀬俊朗氏も、菅平に特別な思い入れをもち、クラウドファンディングを支援している。
「菅平は、高校、大学、トップリーグ、そして日本代表でも合宿に行った個人的にもとても大切な場所です。はじめて行ったのは高校のとき。道路やグラウンドにいるガタイのいい学生のカバンを見ると、『おお、あそこの高校か』と。日本中から集まった強豪校の名前をチェックしていましたね。僕の高校(大阪府立北野高校)は弱くて、普段は彼らと試合する機会もなかったのでいちいち驚いていました。懐かしいですね」
廣瀬氏はいま「一般社団法人スポーツを止めるな」の共同代表理事を務め、コロナ禍で大会が中止になりアピールの場を失った高校生アスリートを支援する活動に取り組んでいる。選手が投稿した動画に「#ラグビーを止めるな2020」とタグ付けしたものを、大学のリクルーターなどが見られるように仕掛けた。廣瀬氏の呼びかけで、五郎丸歩選手などのトップ選手が動画にコメントをしたり、リツイートしたことでムーブメントは拡大。実際にプレーをアピールする動画の投稿をきっかけに大学進学のチャンスをつかむケースも出てきている。
合宿を経験することでえられるもの
高校ラグビーでもコロナ禍で3月の全国選抜大会、7月に菅平で開催される7人制ラグビーの全国大会も中止になった。
「直接高校生のアスリートと話していると、トレーニングの方法や進路についての悩みも当然ありますが、試合がなくなることで自分の成長が実感できないという気持ちが大きいなと感じています。いくら一人で練習していても、試合や他の人とのトレーニングで客観化、相対化できないと自分の成長度がわからない。チームのキャプテンたちと話していても、チームのいまの状態が図れない不安を抱えている。その観点からみても、菅平での合宿がいかに意味あるものだったかと痛感しました」(廣瀬氏)
これまで泊めた中で最も印象に残った選手は、あの有名選手
ゾンタックの松浦オーナーは、これまで30年にわたってトップ選手を見てきて印象に残った場面をこう語る。
「東芝のキャプテンとして来館したリーチ・マイケルさんのことは印象に残っています。彼はバスから宿に荷物を運びおろすときに、他の選手はすぐに部屋に入る中、何を言うでもなく率先して、そして最後まで残ってやっていました。こういう人が一流の『キャプテン』なんだと思わされましたね」と、普段は見られない合宿生活ならではのエピソードを語ってくれた。
新型コロナは、大会・試合の中止だけでなくそれを支える産業にも大きなダメージを与えている。まだ表出していない被害は、今後さらに拡大する可能性がある。いま、自分に何ができるのか。苦しいときにどう頑張るのか――そんな問いを、夏合宿の聖地・菅平は投げかけているのかもしれない。
1981年、大阪府生まれ。5歳からラグビーをはじめ、大阪府立北野高校、慶應義塾大学、東芝ブレイブルーパス、日本代表でも主将を務めた。「#ラグビーを止めるな2020」では、選手のプレー動画をSNSに投稿し、大学などのリクルーターが見られる仕組みを構築。取り組みはラグビー以外のスポーツに拡大している。