達成感を積み重ねて、習慣化する
まず岩本は、掃除の徹底と人材の採用、モデル改善の実践に焦点を絞った。
売り場のクレンリネス(衛生管理)は小売業の基本、初歩中の初歩だ。ところが、ウオエイはその初歩がなっていなかった。掃除の必要性をたたきこむため、岩本は幹部社員をトヨタ生産方式の見学合宿に連れて行った。
百聞は一見にしかずだ。効率的な生産方式を支えているのは、定めた位置に定めた量を置くという基本行動であることを学んで帰ると、その後、売り場はみちがえるように綺麗になった。掃除を徹底し、入荷した商品をその日のうちに並べさせ、週に1回、社内に設けた委員会が掃除状況をチェックした成果である。段ボール1枚を敷いただけの状態で商品が床に直置きされる悲しい光景は減り、欠品が目立っていた棚も解決に向かっていく。
岩本はトイレ掃除にも力を入れた。
「業者には頼まず、自分たちの手で行っています。そうすると、汚れの程度もわかるし、綺麗になった喜びも得られる。達成感が生まれると、言われなくてもみな掃除をやるようになり、お客様の評価も上がってきました。掃除を社内文化として定着させるには、結局達成感を積み重ねて、習慣化していくしかないんですね」
人材面では、先行投資をして人材を採用し、26歳の男性を店長に任命する英断も行っている。安穏とした組織にゆさぶりをかけるためだ。曖昧だった責任の所在をはっきりさせるために組織構造にもメスを入れ、組織図を作成した。
さらに、客には「ウオエイが変わってきていること」を、社内には「あんな店になりたい」という成功事例を示すため、汚れたのれんを美しく整えようと改装に踏み切った。といっても、いきなり全店舗の改装はコスト的にも難しいので、まずは2店舗だけが対象だ。
改装したのは燕店と石山店。どちらも改装前は、商品が脈絡なく煩雑に並んでいる売り場だったそうだ。