「小商圏で商売をしているので、お客様の顔を見れば満足してもらえたのかどうか、すぐにわかる。反応を見ながらねばり強く販売していったら、ブランド牛がよく売れるようになりました。ロスが出なくなるまで半年近い時間がかかりましたが、いまでは人気コーナーです」と、改革の成果を話す岩本はうれしそうだ。
精肉部門ではほかにも大きな変化があった。センター方式の採用だ。岩本は、各店バラバラでの加工を取りやめ、1店に精肉センターを設けて、1カ所で肉を加工しパックする仕組みを取り入れた。
センター方式の成否の鍵は、いかに売り上げ見込みの精度を上げ、ロスを防ぐかにある。岩本は基本の棚割を作成し、過去のデータから時間帯ごとの見込み数をはじきだし、加工やパックを行うパートの定性的な技術(包丁さばきがうまく、商品を美しく加工できるといった能力)と定量的な技術(1時間に何パックできるかという量をこなす能力)を加味しながら人時生産計画を立てた。これをベースに適量を仕入れ加工すれば、ロスなく、ジャストインタイムで売り場に商品を納入できる。
精肉センター稼働後は、売り場にまだ商品が残っているので、新しく加工した鮮度の高い商品は冷蔵庫の中にしまわれたまま――という問題は、確実に解決に近づいた。精肉の利益率は6%増。効果は出ている。
現状に甘んじていてはじり貧になるだけ
岩本はさらに、生産性を上げるノウハウを生鮮3部門すべてに取り入れた。ウオエイはこれまで商品作りは各店任せで、本社は一切コントロールしていなかった。各店によって売れる個数や内容は異なるから、それに合わせてというと聞こえはいいが、要は単なる出たとこ勝負。基本棚割はおろか、週に何個売れるから今日は何個仕入れようといった計算もろくになされていないのが実態だった。そこに岩本は、サイエンスを応用したのである。
「スーパーの中に小さな工場があるようなもの。地方のスーパーでは、売価はマーケットによって決められます。店の都合で売価を決めれば客離れを起こすだけ。利益を上げるには原価を抑えるしかありません。売り場での陳列数や販売数をにらんで生産計画を立てるときに、原価計算にまで踏み込んでできるだけ原価を下げる。それが結局、企業力につながるんですよ」