このあたりのサイエンスは、コンサルタント出身である岩本の得意領域。それだけに熱が入るが、まだまだ問題は山積みだ。
「これ以上原価は下がりません」
「取引先がダメだというので、無理です。つきあいがありますから」
バイヤーからこうした安易な答えが返ってくると、岩本は冷静に諭す。
「自分たちが死にかけているのに、取引先とのつきあいが先だと言うのですか。そんなばかな。原価が下がらないなら、他の取引先を当たる。円がダメならドル建てを考えるとか、方法はいくらでもある。議論をしていると知恵が出てブレイクスルーできるはずだからと、とにかくねばり強く言っていくしかありません」
取引先とのつきあいにどっぷり浸かっていた地方スーパーの人間がいきなりドル建てといわれても無理がある。言われたほうはさぞかし面食らったことだろう。しかし、現状に甘んじていてはじり貧になるだけ。岩本は、従業員に危機感を持たせ、自らの頭で考え、知恵を絞り出させようと根気強く働きかけている。
そのほか、ウオエイでは、「親孝行手当て」や「残業代を全額払い」などで従業員のやる気を引き出し、2008年のお盆シーズンの鮮魚と精肉、惣菜の売り上げトータルが既存店では前年比200%増、改装店では1000%アップを記録するなど、順調に成長している。岩本が経営を引き継いだ頃のウオエイの売り上げは39億円。現在(2008年)は48億円、120%増の数字を示した。ただし、人材採用を進めたので販管費は膨らみ、赤字はまだ解消できていない。赤字解消は3年以内が目標だ。
※本連載は、プレジデント社刊『論より商い』(三田村蕗子著)からの抜粋です。