キャバクラに必要なのはドレスと酒ではない
さらに閉めた店舗で働く社員は、同じく稼働店に行くか、あるいは新規メニュー開発などに従業させていた。馴染みの客には、稼働店への誘導を促し、なんとか事業を継続させた。日本人は、どうしても、開店させた店を挽回しようと頑張る傾向にある。しかし、多くは下りのエスカレーターを登るような徒労に襲われる。
早めに撤退する勇気を持ち、サンクコストを最小限に抑える覚悟もときに必要だ。
【2‐2】価値の再定義
同時に、自分たちが提供しているものの価値がどこにあるのか、再定義が必要だろう。
たとえば、スナックの例を挙げた。もしスナックがお客の悩みを聞く場所だとすると、極端な話、おつまみや酒の種類はこだわる必要がない。それよりも、ママがコーチングやヒアリングのスキルを上げたほうがお客のニーズには合致することになる。極論とはいえ、冗談ではない。
キャバクラなどはどうだろうか。同じく酒の種類も大切だろうが、もっと重要視するべきは接待により、お客に楽しんでもらうことだろう。あえてそのように解釈できれば、女性がドレスを着て、3密の空間で隣に座ることはない。
たとえば、「海の家」のように海岸や川沿いでバーベキューをやってもいい。土日に昼間からお客と肉を焼く。そうすると、普段では見られない女性の容貌をお客に見せることになるし、魅せられるだろう。非日常の環境がゆえに、お客は高級ワインを何本も空けてくれるかもしれない。
ライブハウスはVR配信も選択肢に入れるべき
また、あまり一般的には知られていないものの、ライブハウスは飲食店としても営業している。コロナ禍の際にメディアで「飲食店やライブハウスは大変ですね」と語られていたが、そもそも飲食店という大集合のなかに、中カテゴリであるライブハウスが存在する。ライブハウスの本質は、アーティストのリアルな演奏を聴くことにある。そして場を共有することに価値がある。なぜだかわからないが、目の前で必死に演奏する人間を見て、私たちは感動するのだ。
演奏の動画やDVDを観ても感動するけれども、やはり生の迫力にはかなわない。ならばVR(仮想空間)でのライブを提供すればいい。ライブハウスでは、残念ながら、定員の数分の1しか動員できないかもしれない。しかし、その一つの席からVRでの配信を行う。お客には遠隔で、VRヘッドセットで生の演奏を感じてもらう。そうすれば、全国から参加できるはずで、これまでお客にならなかった地域をすくい上げられる。
また3密を避け、ライブをリアルで楽しんでくれるお客には倍の価格でチケットを売るといった検討も進んでいる。これを機会に、リアルとネットを差別化するのだ。