「4割減」を前提に経営の健全化を考える

ただ、テイクアウトはまだしも、デリバリーは儲からない。というのも、それを運ぶ業者たちもマージンが必要だ。だから、1000円の弁当を販売しても、30〜40%がデリバリー業者に持っていかれてしまう。材料費を引くと、飲食店にはほとんど儲けが残らない。

坂口孝則『1年仕事がなくても倒産しない経営術』(ハガツサブックス)
坂口孝則『1年仕事がなくても倒産しない経営術』(ハガツサブックス)

やらねばならない、でも、儲からない、というジレンマがある。さらに、せっかくデリバリーをしても、客単価が低いと自転車操業のなかで売上を補填することしかできない。

では、何ができるのか。飲食業ができるのは次のとおりだ。

【1‐1】意識を変える

こう考えてみよう。この2年間は、従来の6割しかお客が来ないと。この4割減とは現実的な数字だと私は思う。客席を空けて座ってもらうのであれば、半分でも現実に近いだろう。

これは20席のテーブルが、10席しか稼働しないことを意味する。別に、4割減の席でもいい。肝要は、その状況で利益を上げる方法を考えることだ。夢想でもいい。回転率の考え方も変わってくるだろう。満席になることはない。半分程度しか埋まらないなかで経営の健全化を考えるのだ。

常識はずれでも「客単価4割上昇」を目指す

そうすると、これまで避けてきた経営課題と向き合わざるを得ない。つまり、客単価を上げるための方策だ。極論を言えば、客数が4割減っても、客単価が4割ほど上昇すれば問題がない。そんなことは現実的ではない、と思うだろう。しかしやらねばならない。バカげていても、常識はずれでも、客単価を4割ほど上げないといけない。

飲食店は、私が思うところ「効率と安さだけを求めるお客のために、低価格を提供するもの」と「豪華な雰囲気や快楽を求めるお客のために、高価格を提供するもの」にわかれている。これはどちらが究極的に素晴らしい、という議論ではない。安さという意味での快楽と、心地よいという快楽にわかれているのだ。

そのときに、前者を選ぶのは大資本しかあり得ない。というよりは、少資本であれば後者を選択するしかない。