食事がおいしいかどうかは重要ではない

よく多様性などという言葉が叫ばれる。しかし、事実は逆だ。飲食店は脱・多様性を求めねばならない。あなたという個人を売り物にするしかない。多様性ではなく、単独であなたを売りにするのだ。

つまり飲食店はファンビジネスだ。食事を提供する、という価値定義から、食事を渡す時間を通じてあなたのファンを増やす、と再定義せねばならない。個人しか売り物になる商品はない。

また、安心してほしい。これも極論を言うと、食事がおいしいかどうかは問題にならない。それよりも、人々が求めているのは、リラックスできる感覚や安堵、誰かとの会話だ。しかも、それこそが大資本に勝てる武器になる。500円の定食を、ビールつきで1万円でも払ってくれるように考える必要がある。

スナックは、3密の象徴で集客に苦労していた。しかし、スナックの本質価値は、酒のおいしさではなく、悩みを聞いてもらったり、愚痴を吐露したりできるところだ。だから、スナックはオンライン上でも問題なく開店できた。さらに、コロナ禍でバーチャル・スナックを運営していたところ、これまでならば絶対に触れ合うことのなかったお客と出会うことができ、さらにリアル店舗への誘導が可能となっている。これも本質価値を検討する熟考ゆえだ。儲かるかは別にしても、オンライン・キャバクラなどのサービスも出てきている。デジタル上でも、自社の価値が提供できるかが問われている。

イタリア人シェフが秘伝レシピを送ってきたワケ

【1‐2】情報の発信

先日、イタリアのホテルからメールが届いた。さすがに「今は観光できないだろう」と思った。そうすると、メールはホテルのシェフからのもので、秘伝の料理レシピを教えてくれた。私はかつて、バイオリンの工房を見学するために日ほどイタリアを巡った。その際に、レストランの食事がとびきりおいしかったホテルだ。

そのメールには、新型コロナウイルスを憂い、そして巣ごもり時期に料理を作って楽しんでほしいと、レシピが公開されていた。秘伝のレシピを公開するわけだから、売上が下がるのではないかと心配するかもしれない。しかし、事実はきっと逆だ。情報を公開して売上が下がることはほぼない。