今は正しいものも5年後はわからない

DREAMにいた頃、ファイトマネー未払い問題が発生したことがあった。当時の関係者から「(DREAMは)大丈夫だから」と言われただけで安心していた選手たちもいたけど、僕は冷静に「大丈夫なわけないでしょ? 経営的に危ないよね」と考えていた。

格闘技選手は自分をブランディングしていく必要がある。そのときにベストな身の振り方は何かを考えたとき、危険な場所、沈みそうな団体にい続けるという選択肢は、当時の僕にはなかった。この頃の状況をこの記事で詳しく記すつもりはないけれど、DREAMを離れた僕がその後、ONE FC(現在はONE Championship)と契約を交わしたのは皆さんがご存じの通りだ。

主戦場として活動する団体や地域以外でも、リスクを感じ取る嗅覚は常に必要になる。特にわかりやすいのは、トレーニングやコンディショニングだろう。

これらは方法に流行り廃りがある。研究が続けられる中で、新たに明らかになってくることもあるのだ。今は正しくても5年後には間違った方法になっていたり、逆に5年前は良くないとされていた情報が、逆に正しいものとして認知されたりすることも少なくはないだろう。

だから、僕は「今みんながやっている方法」を何の疑いもなく「いい」と思い込んで、「みんながやっているから安心だ」という理由で、それを取り入れることはない。

周囲と必要以上に距離を詰めずに、情報を広く深く集めながら「自分に合うかどうか」を冷静に考えるのだ。

失敗してもベストを尽くして生きていればいい

もちろん、迷うことはある。今だっていろんなことに迷い続けている。でも、世間や周りからの影響を受けず、自分の頭で考えて決めたことだけを「正しい」と信じて、僕は生きていくのだ。

青木真也『距離思考』(徳間書店)
青木真也『距離思考』(徳間書店)

僕のような格闘技選手の場合、自分の選択や決定を日々一つひとつ積み重ねて、最終的には試合の勝敗というかたちで結果が出る。でも、それは「そのときの結果」でしかない。勝敗の解釈とはその後の行動で変えられるものだ。

たとえ試合で負けたとしても、もしくは失敗したとしても、自分なりのベストを尽くして生きてさえいれば、失敗という出来事の解釈は変わっていく。

だから僕は群れずに、自分の価値観やものさしを磨き抜いて、それに基づいた行動をし続けたい。それが結果的に青木真也らしい生き方を貫くことにつながるからだ。

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