緊急事態宣言が明けて出社する人が増えるにつれ、「テレワークのおかげで社内の苦手な人と距離をとれてよかったのに」とテレワークを惜しむ声も。今後、テレワークと出社のハイブリッド型勤務が可能な時代に、どうやったら苦手な人とうまく距離をとることができるのでしょうか。精神科医で産業医の井上智介さんに聞きました。
オフィスで話し合うビジネスウーマンのグループ
※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

苦手意識の根底にあるのは価値観の違い

人間関係で悩んで転職を考える人は多いでしょう。でも転職先でもきっと「苦手な人」はいます。なぜ、どこに行っても「苦手な人」がいるのか。

この苦手意識の根底には「価値観」の違いがあります。自分の心地いいと思える価値観が、人の好き嫌いに大きく関わっているのです。

私たちがもつ価値観は、幼少期から身につけてきたものです。幼少期に両親や先生など教育者から教わったことが根強く残っていて、それがベースになっているのです。

たとえば、親から「『いただきます』と言ってから食べなさい」と厳しく言われて育った人なら、それが自分の当たり前になって、みんなと食べるときも、一人で外食するときも、食べる前は「いただきます」と言います。

でも、そこまで強く言われずに育った人もいます。そうすると「いただきます」と言うように言われて育った人は、「なんで、あの人は『いただきます』って言わないの」と、ふと引っかかる。良い悪いではなく、自分の価値観に引っかかるんですね。それが価値観のズレであり、イライラの原因になってくるのです。