多くの外資系企業で産業医として活躍してきた武神健之さんは、メンタルが強い人には共通点があると指摘します。誰にもまねできる、心の強い人が実践している習慣とは――。

※本稿は武神健之『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

若いアジアのビジネスウーマン
※写真はイメージです(写真=iStock.com/itakayuki)

習慣1:最悪のシナリオを想定している

人は予想していないことや想定外のことに「(強い)影響」(インパクト)を受けやすく、想定内の出来事に比べ大きなストレスを感じます。

自分に想定外のことが起こったとき、学生時代から優等生で失敗や挫折の経験がなかったり、職場で“できる人”と言われている人たちが予想以上のストレスを感じているケースを、私は産業医としてたくさん見てきました。

一方、想定外の事態においても比較的ストレスに悩まされない人たちは、このような状況に上手に対処する「構える」習慣を持っています。

では、どうすればいいのか。物事に対して「最悪のシナリオ」を想定するようにすればいいのです。そうすることで、万が一大変な事態が起こってしまったときも、事前に最悪の状況を考えているため、ショックを和らげ、ストレスを軽減できます。たとえば「急に病気になったら?」「突然、会社が倒産したら?」など最悪のケースを想定し構えておけば、イザというときに必要以上にショックを受けず、上手に対処できることでしょう。

構える習慣を持っている人は、仕事、人間関係、お金、健康、住居など想定外の事態を定期的に想定していることが多く、「想定内の範囲が広い」という特徴を持っています。

ベストシナリオとワーストシナリオを想定

これだけ聞くと、「あらゆる状況に対して、すべてのパターンを想定するなんて、無理だ」と思われるかもしれませんが、A、B、C、D、E……というように起こり得るあらゆるパターンを想定すべきということではありません。そもそも変化の激しい時代に、すべてのパターンを考え、対応するのは不可能です。

ポイントは、そうなったら嬉しい「ベストシナリオ」と、最悪の事態である「ワーストシナリオ」をしっかりと考え、その間にくる想定内の幅を広げること。たとえば、私のクライアントは外資系企業が多いのですが、中途採用者の大半は、入社時に「外資系は給料は高いけど、結果を出さないと、いつでも会社都合でクビになり得る」ということを覚悟して入ってきます。

その覚悟を忘れずに「構える」ことができている人は、定期的に自分の履歴書を更新し、自分の客観的市場評価や、年俸を含めた転職の可能性を見直しています。だからこそ、ワーストケースとなった場合でも、即座に次のアクションを起こすことができるのです。