復職初日にクビを宣告されたケース

働き方改革の始まるずっと前、とある会社の部門長クラスにOさんという方がいました。もともとかなりのハードワーカーで、部下たちにも同じようなハードワークを求めすぎた結果、彼の部下から過労による不調者が出た後、彼自身もまた燃え尽き、休職となってしまいました。

1年後、ようやく復職したのですが、出社初日、人事部に呼ばれ、なんとその場で、「あなたのための席はもうない」と伝えられたというのです。たまたま翌日面談があった私はその事実を知り、非常に驚いたことを記憶していますが、もっと驚いたのは、彼自身がそのことを覚悟していたことでした。

彼くらいの役職レベルになると、会社に「席はない」と言われたときはすんなりと身を引くべきという暗黙の了解があるそうで、「ショックはあったが、予想と覚悟はしていたので、そのまま帰り道に履歴書を購入しました。今日はこれから転職業者さんたちと面接に行きます」と、話してくれたのです。

想定外について、事前にしっかりと構えて、ショックを受けすぎずに、しっかりと対処する──。まさにそのことを実践していた彼のメンタルタフネスにあっぱれと感心したものですが、彼はその後、とある会社の重役をやっていると風の便りに聞きました。

しかし、Oさんのように「構える」ことができているケースは稀で、外資系であっても多くの方は入社して数年もすると、入社当初の覚悟を忘れてしまいます。高い年収に合わせて生活レベルを上げてしまい、もはや収入のためにその会社で働き続けなくてはならない人、結果を出し続けるための自己研鑽を忘れてしまった人となってしまうのです。そして、会社の業績が傾き、人員削減が行われ、声が掛かると、「こんなはずではなかった……」と、いとも簡単に心が折れてしまうのを私も何度か目にしてきました。

習慣2:時間、空間、五感を区切る

人はストレス状況が続いたり、終わりが見えないとき、ストレスをより大きく感じます。そうした状況に対処するためには、自分の緊張した気持ちを弛緩(リラックス)させる習慣を身につけるとよいでしょう。

休み時間、休日、休暇をしっかりとるのはもちろんのこと、マラソン選手が喉が渇く前に給水する地点を決めているように、あらかじめ“休み”を確保し、それに合わせて仕事のスケジュールを組む。または、オフのときには、海や山、高層ビルの展望ラウンジなど、会社や家庭などの日常空間から距離をとれるところに行くことで、非日常感を味わえば、日頃の緊張を和らげることができます。

好きな音楽や絵画や景色を堪能したり、アロマテラピーやグルメ、温泉でリラックスするなど、気持ちを弛緩させるための「オフタイム」をとり、メリハリをつけることが重要なのです。

ストレスに悩まされない人たちは、ストレスの持続する期間を意図的に区切り、緊張という感情を上手に断ち切ることができています。

この「区切る」には、主に3つあります。以下、「時間を区切る」「空間を区切る」「五感を区切る」方法を順番に見ていきましょう。