趣味にはどれくらいのお金がかかるものだろうか。旅行会社に勤めるコンテンツツーリズム研究家の古関和典さんは「職業柄、さまざまな領域の強者たちに面識を得てきたが、特に鉄道趣味においては、突き詰めた趣味人を何人か知っている」という――。

鉄道趣味に消えていくお金はどれくらいか

「ウエにはウエがいる」。これはどんなジャンルにおいても当てはまる公式だ。私は旅行会社に勤めるサラリーマンだが、職業柄、さまざまな領域の強者たちに面識を得てきた。

特に鉄道趣味においては、突き詰めた趣味人を何人か知っている。たとえば埼玉県のHさん(仮名・60歳代)のような、自宅に踏切や動態保存(運転可能な状態での保存)の「10トンディーゼル機関車」を持っている人などが代表例だが、知人のKさん(仮名・60歳代)は、群馬県に別荘を保有し、そこで本格的な鉄道模型を走らせている。

また、同じく知人のSさん(仮名・50歳代)は、自宅に「時刻表」のバックナンバーを保管していて、古本屋に行っては「欠けている」月号を買い集めるという、異例の収集家。過去の時刻表に、今は走っていない列車や廃止された駅を見つけるのが喜びだという。

鉄道趣味には、「撮り鉄」「乗り鉄」「収集鉄」などさまざまな細分化された「ジャンル」があるが、その中では「模型鉄」が最もお金がかかるカテゴリーだと一般的に言われている。この趣味には、どれくらいのお金が消えていくものか、「類型」に当てはめて考えてみたい。

「模型鉄」初心者から強者までの差額

まず「模型鉄」については、眺める対象となる模型の大きさには何種類かあり、線路の幅に応じて小さい順からZゲージ、Nゲージ、TTゲージ、Oゲージ、Gゲージと分類される。

初心者におすすめなのは、車両のラインナップも多い線路幅9ミリのNゲージで、1両あたり8000円~1万5000円程度が相場のようである。ただし当然のごとく、1両では済まない。1カ月に1両ずつ車両を買い集めれば年間12万~20万円で済むと考えられるが、レールや付帯設備など、それぞれ結構な値段がする。そのためいったん沼にハマると、年間50万円ほどの出費は覚悟しなければならない。

さらに、その模型を設置する場所についても、それなりのスペースが必要となる。最も線路幅の大きなサイズのGゲージ(線路幅45ミリ)となると、ヨーロッパでは「庭園鉄道」と呼ばれており、まさしく土地や建物が必要なレベルとなる。車両だけでも、1両あたり数万円~20万円程度が一般的であるが、レールを敷いて実際に走らせるとなると、前述の別荘のような形で所有する人も多く、土地代や建物代なども含めると1千万円単位の支出となるケースもある。

イギリスの「庭園鉄道」を走るマモドのライブスチーム蒸気機関車
イギリスの「庭園鉄道」を走るマモドのライブスチーム蒸気機関車(写真=AmosWolfe/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons