「日本人は日本人がいるところに進出する」という悪癖

私は不思議に思います。バンコクへ行くと、日本企業の看板、日本食の店がいくつもある。ミャンマーにも増えつつあります。シンガポールにもある。しかし、マレーシア、インドネシアといったイスラムの国へ行くと、日本企業の知名度はタイほど高くありません。

夜のバンコク・リトル東京
写真=iStock.com/David_Bokuchava
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日本企業のすべてが東南アジアや世界で存在感を示しているわけではありません。日本企業のうち、トヨタ、日産、ホンダといった自動車会社だけが、かろうじて存在感を放っているのです。

そして、日本企業は存在感を示しているその自動車会社が進出している東南アジア諸国を目指している。しかし、東南アジアのマーケット規模はインドほどではありません。たとえば……。

ASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟国はブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10カ国。合わせて人口は6億5000万人。それなのになぜ、自動車会社以外の日本企業はタイ、ベトナム、ミャンマーへ進出するのでしょうか。

日本人ビジネスマンには「冒険心」がない

答えは簡単です。日本人は日本人がいるところに進出する。日本のビジネスマンには冒険心がないからです。冷静にマーケットリサーチをしたら、各国がそれぞれの言葉や文化を持つ6億5000万人のマーケットよりも、多様性があるとはいえ、約13億人のインドマーケットへ進出するのが当然の帰結ではないでしょうか。

日本人は楽なところが好きなのです。タイのバンコクならば赴任してもいいけれど、インドのコルカタへ行くことは嫌なのです。理由は「そこには日本人がいないから」、もしくは「私が好きな種類の日本人がいないから」。

私はそこに日本人ビジネスマンのひ弱な商人魂を見ます。

インドのマルワリ商人だったら、たったひとりでマーケットを開拓するのが自分のやるべきことだとわかっています。他に同種の企業が進出しているところへ行こうなんて考えるマルワリ商人はいません。

日本人ビジネスマンがさらに成長したいのなら、日本人のいない国へ行くことです。そこでマーケットのなかに入っていって、その国にないものを持ってきて売るのです。

スズキの孤軍奮闘に見る成功の鍵

スズキがインドの自動車市場の半分近くを占有しているのは、トヨタやフォルクスワーゲンが来ないうちにインドに進出してきたからではないでしょうか。

インドには規制はなくなりつつあるとはいえ、進出企業に大きく市場が開かれているとはまだいえません。スズキが成功したのは当初、国営のマルチと合弁で会社を設立したからです。スズキのインドでの歩みは次のようになります。マルチ・スズキ・インディアは現在の名称です。インドでは乗用車を造り、販売しています。