インドで造った車にはむろん輸入関税はかかりません。しかし、レクサスのような高級車を輸入すると125パーセントの高関税がかかります。日本で買う倍以上の高価な車を売ってしまうのだから、MGFトヨタはサービス力と販売力のある会社なのでしょう。

MGFトヨタが成功を収めた3つの理由

見たところ、MGFトヨタは点検修理サービスに力を入れていて、しかも、他の販売店にはない特長がありました。

ひとつは徹底した顧客志向です。「お客様は神様です」を実践していました。予約した客が車を持ってきたら、入り口の警備員が全店の従業員に向けてゲートインを知らせる。その後、すぐに世話係が飛んできて、入庫、客との面談、点検修理箇所のチェックなどを済ませる。点検、修理に入るのはそれからです。マンツーマンで客の世話をします。

店の幹部はこう言っていました。

「インドには車検システムはありません。ただし、排ガス規制があるので、お客様は一定のタイミングで車をメンテナンスする必要があります。私どもは時間と走行距離の両方に基準を設けていて、5000キロ走った時点、もしくは、買ってから6カ月経った時点で点検に来ていただきます。また、車によっては1万キロ、もしくは1年というメンテナンスタイミングになることもあります。インドのカーオーナーの走行距離は法人客でしたら、1年間に5万キロから6万キロ。個人客でしたら、だいたい2万キロ以下です」

2番目の特長は、リフレッシュメント(スナックなどの軽食)とミール(食事)を無料提供していること。インドでは顧客サービスの一環となっています。車が贅沢品に当たる新興国では、見込み客、顧客に対して、食事を提供するくらいはごく当然のサービスメニューになっているのでしょうね。

3つ目は「エクスプレス・メンテナンス」。車両点検を実質、60分で終えてしまうサービスです。インドで60分という短時間で点検をやることができるのは、トヨタの販売店だけだそうです。

現地に関心がないトップと早く帰りたい駐在員

そういえば、私の経験に照らすと、インドに来ている日本人ビジネスマンに共通することがあります。それは「つねに日本に帰ることを考えている」こと。

インドは貧しい国、生活に不便な国、お腹を壊す国という偏見を抱いて赴任してきたのでしょう。「インドに駐在になってから、日本に帰る日をカウントダウンしている」と真顔で言うビジネスマンにも会ったことがあります。とても質の悪いジョークだとは本人は気づいていませんでしたね。

ただ、これもまたある日本人ビジネスマンに言わせれば「ダスさん、それは何もインドに限ったことじゃないですよ。東欧、東南アジア、中南米、アフリカ……、どこでも同じです」とのことでした。

問題は偏見を持っていることだけではありません。長くてもせいぜい3年ですから「自分がいる間は何もしません。問題が起きなければいいと祈っています」と思っていることでしょう。