「ポスト安倍」選びは菅官房長官の動向が鍵を握る

政治日程を考慮し、当初は東京都知事選の告示日であり、安倍総理が通常国会閉会を受けた記者会見を行う6月18日の逮捕は避けるとの見方もあったが、もはや政治のことは関係ないと突破するあたりに検察サイドの強い意志を感じる。お隣の韓国では昨年末、文在寅大統領の最側近である法相に対する検察の捜査が耳目を集めたが、その構図は対岸の火事とはいかない惨めな結末である。

話を元に戻そう。一連の辞任劇と立件を見れば「政権ナンバー2」の菅官房長官が狙い撃ちにされ、自民党内での「菅包囲網」が形成されていくようにも映るが、それは必ずしも当たらない。確かに「令和おじさん」ともてはやされた時期に比べ、菅官房長官の人気は党内外で低下したが、依然として「ポスト安倍」選びは菅官房長官の動向が鍵を握るためだ。

実は“菅さん慕う面々”は細田派に次ぐ勢力

河井夫妻は逮捕されたものの、もう1人スピード辞任した菅氏側近の菅原前経産相は今年1月の「雲隠れ」から一転、6月16日に急遽記者会見し、選挙区内で香典を秘書が配るなど公選法に抵触する事例があったことを認めて謝罪。東京地検特捜部は任意聴取したものの、刑事責任を問うかどうかは慎重に判断するとみられている。河井夫妻の逮捕で菅官房長官への遠心力は一時的に働くとみられるが、今でも50人以上の無派閥議員の多くは菅原氏を中心に「菅官房長官を慕う面々」(自民党中堅議員)とされる。単純に計算すれば、それは100人近い議員が所属する自民党最大派閥の細田派に次ぐ勢力を意味する。

菅官房長官が最近、親密な関係を築いている二階俊博幹事長が率いる二階派(48人)を加えれば細田派を上回る最大勢力といえ、「ポスト安倍」選びでは決して無視できない存在なのだ。安倍総理が「政界屈指の政治的技術を持つ」と評する二階氏は、ここのところ次の政局をにらんだ動きを加速している。

今回の河井夫妻をめぐる公選法違反事件では、党本部から案里氏陣営に約1億5000万円が提供された疑惑が報じられているが、二階氏は「支部立ち上げに伴い、党勢拡大のための広報誌を複数回、全県に配布した際の費用に充てられたと報告を受けている」「言われているような買収に使うようなことはできないのは当然だ」と一蹴。その一方で、今月16日に麻生太郎副総理兼財務相、同17に菅官房長官とそれぞれ会食し、9月には「ポスト安倍」の有力候補である石破茂元幹事長の政治資金パーティーで講演することも快諾した。