マスクですら自給自足できない国になっていた
「私たちが『石にかじりついて』守り続けてきたものは、『300万台』という台数ではありません。守り続けてきたものは、世の中が困った時に必要なものをつくることができる、そんな技術と技能を習得した人財」を国内にしっかりと残してきたことについて言及していました。「より良いものをより安くつくる」ために、工場を海外に全て移すことが本当に日本に取って良いことなのか? 超円高をはじめ、どんなに経営環境が厳しくなっても、日本国内にモノづくりが必要であることを、あらためて認識させられました。
今回のコロナをきっかけに、あらわになったことは、マスクや人工呼吸器ですら自給自足できない国になっていたことを知ることになりました。日本はマスクを中国からの輸入に8割を依存していたのです。新型コロナウイルスの感染が拡大すると、中国はマスクを国家応急備蓄物資に指定し、国内に供給するため、マスクの輸出を禁止したことで、医療関係物資が国家の戦略物資の様相を呈しました。
日本が陥った負のスパイラル
マスクを自給自足できない国になった背景には日本のデフレ構造があります。日本経済は1980年代後半のバブル崩壊以降、土地や株式などの資産価格の下落がマクロ経済に大きな影響を与えることを経験してきました。特に日本の金融は土地資産を担保とした融資が多く、不動産価格の下落が銀行融資の抑制につながり、その結果、景気のさらなる悪化と資産価格の下落を引き起こすというデフレスパイラルがみられました。そして、産価値が下落すると、負債を抱えずに借金などは早く返そうという動きになります。
つまり、「資産の縮小」と「負債の縮小」が始まるのです。これによって、企業は生き残りをかけますが、業績が向上しない状況が続きました。欧米であれば、今回のコロナでも明らかなように雇用調整をバッサリ行います。しかし、日本は雇用調整を行わずに、雇用を守りながら経営を続ける道を取ってきたのです。
そして、立ち行かなくなった企業は国内のサプライチェーンを海外に持っていくことで、いかにコストを圧縮し安いモノを作れるか、その場所に限界が来れば、さらに安く生産できる場所に移るといった負のスパイラルを繰り返してきたのです。