評価には「重み付け」がなされている

順位だけではなく、この調査のスコアについて詳細を見ていきます。本調査は9つの項目から評価され、さらに項目ごとに「重み付け」がなされています。つまり、評価の重い項目で高スコアがつけられればランキング上位に入り、軽い項目で低スコアがつけられても大きくランクを落とすことがないという評価モデルとなっています。

同調査においてはスコアに「重み付け」がなされている
図表=筆者作成
同調査においてはスコアに「重み付け」がなされている

2020年における日本の総合スコアは「97.9」と非常に高い数値です。個別スコアでは「Entrepreneurship」がドイツに次ぐ2位であり、そして同項目はこの調査において最も重み付けがされている項目です。日本は「Entrepreneurship」で大きくスコアを稼いでいることになります。また、高スコアがつけられている他の項目には「Movers(5位)」「Cultural Influence(6位)」「Power(7位)」が挙げられ、いずれも世界トップ10入りしています。

一方で評価が低かったスコアもあります。それは「Adventure(34位)」「Open for Business(25位)」です。これらはいずれも高いスコアを獲得できていません。「Adventure」は日本に付けられたスコアの中で最も低くなりましたが、スコアの重み付けが最も小さい項目であるため、失点の影響が小さかったと捉えることができます。

日本は「起業家精神」が本当に旺盛なのか

さて、日本が高スコアを取得した「Entrepreneurship」について考えてみます。この項目は「起業家精神」などと訳されることが多い単語です。オックスフォード辞典をひくと、「the activity of making money by starting or running businesses, especially when this involves taking financial risks(企業を運営することでお金を稼ぐ活動、財政的リスクを伴う)」と定義されています。

起業と言われて多くの人の脳裏に浮かぶのは、米国のシリコンバレーではないでしょうか。シリコンバレーは、起業家を多く輩出しており、優れたアイデアや才能に対しての積極投資が行われる土壌があります。ビジネスの立ち上げ失敗への寛容さがあり、世界トップ企業郡であるGAFAも「多死多産」の結果として生まれたと言えます。つまり、シリコンバレーのビジネスエコシステムにより生み出されたのです。一方で、日本はリスク忌避志向が強く、起業家へのセーフティーネットはないというイメージがあります。実際、日本における起業家の数は多くありません。中小企業白書によると、日本では毎年12万社ほどの法人が新設されています。他方、米国では毎月55万社程が設立されていますから、人口比で比較をしても日本人はアメリカ人ほど起業しないのは数字でも明らかなのです。