「最初の1棟」購入までに調べた物件は4万件
元銀行マンで「東京調布大家の会」を主宰する海野真也さんは、2010年に1棟目を購入しているが、勉強期間として購入前の3年半を費やした。その期間、買おうとして買えなかったわけではないが、「インターネットに氾濫している収益不動産の情報に、自ら駄目出しをしていくことで、物件1つ1つを買うべきか否か、検証した」という。立地条件や「積算評価」、利回りのバランスなどを考えながら、インターネットに出ている物件情報を1つ1つ検証した。
積算評価とは、不動産の価値を評価する計算方法の1つで、土地の価値と建物の価値をそれぞれ個別に評価(現在価値による評価)し、それを合算するという評価方法だ。積算評価は、金融機関が「融資の可否」「融資額の上限」などを決定する重要な指標となる。
海野さんは、当時サラリーマンの仕事を終えて帰宅すると、1日3時間ほど物件情報を調べ続け、その数は実に合計4万件にもなったという。周辺地域の海抜や高低差、ハザードマップ掲載の有無をチェックした上で、エリアを絞りこんで現地調査を実施。さらに街歩きを徹底して、飲食店等では近所に引っ越すふりをして店員に土地柄や街の雰囲気を聞いて把握、最終的に福岡や広島など10都市以上の候補エリアで収益不動産を扱う不動産会社をピックアップして問い合わせをした。
その結果、返答があったのは約100社。そのうち20社が真剣に対応してくれたという。
不動産会社と関係を深め、一般公開前に情報をつかむ
さらに5、6社に絞り込み、実際に店舗を訪問し、希望する物件についての詳細な情報を伝え、面談を重ねた。時には一緒に居酒屋に飲みに行き、関係を深めていったという。
購入第1号の物件は福岡のRC造マンションだった。その後、東京、京都でも物件の紹介を受け、現在4棟64戸を所有しているが、いずれも一般に情報が公開される前に売り出しの情報をつかんだ。現在は、いずれの物件もほぼ満室稼働を実現している。
そんな海野さんですら、物件購入後に内部構造の不具合により、五月雨式に多額の工事費がかかるようなケースがあった。「こうしたアクシデントは防ぐことは難しいので、ある程度の手元流動性を高めた状態で物件購入を行うことが基本だと思います」と話す。