自主管理で100万~150万円キャッシュフローが上がることも

川村さんは、利回りを高めるために不可欠なのは、「不動産を安く買うこと」と「運営コストの削減」と考え、自主管理を徹底してきた。管理委託料は全収入に対して5~7%と、一見、少額に見えるが、借入比率が高い場合、税引き後キャッシュフローに占める割合は、決して小さくないという。

例えば、年間家賃収入1000万円の場合、管理会社に支払う管理手数料は家賃収入の5%、その他清掃、補修費用などが年間で50万~100万円かかることを想定すると、合計で100万~150万円かかる。この経費が自主管理することにより、税引き後キャッシュフローが200万円の人なら、300万~350万円に上がる。

ただ、サラリーマンや他の事業を抱えながら、管理会社に委託せずに賃貸経営をするのは大変だ。遠隔地に購入した場合は、なおさら自主管理は難しい。サラリーマンの方たちに自主管理が「必要不可欠」と言いたいわけではない。重要なことは、管理会社に委託しなければ時間が足りないというサラリーマンこそ「余裕なき収支計画をしない」ことだろう。

「月1会議」でリーマン・ショックを乗り越えた

42戸の賃貸住宅を所有する愛知県豊田市の加藤芳雄さんは、賃貸経営には管理会社との連携が重要と考え、毎月定例会議を行ってきた。毎回50分ほどで、管理会社の管理部門担当者と仲介部門担当者、加藤さん家族が参加する。会議のテーマは、主に空室情報、市場情報、リフォーム、ごみステーションの不法投棄など現状の問題点だ。テーマは毎回、加藤さんが決め、議事録は管理部門担当者がまとめる。これまでに200回を超えた。

この定例会議が最も効果を発揮したのは、リーマン・ショックの時だった。満室だった入居が一気に16戸空室になったのだ。当時、加藤さんの物件では空室7戸が損益分岐点だったため、課題は入居率の改善となる。定例会議で改善策を話し合った結果、以下の4点を実行することになった。

1点目は「仲介会社の拡大」だった。当時、7年間共に対策を講じてきた管理会社の仲介力が下がっていた。そこで、仲介する会社を、1社から他の不動産会社を含めて5社に増やすことを決断したが、長年取引している管理会社に、仲介会社を増やすことを伝えるのは辛かったという。管理会社は、その気持ちを汲んで他の不動産会社にも仲介を拡大することに納得。蓋を開けてみると新規仲介会社が奮闘した。

2点目は、家賃を下げるキャンペーンの実施。家賃を3000円下げた。周辺の物件より半年ほど早く下げたため、先手必勝が奏功した。

3点目は、リフォームを行ったこと。リーマン・ショック前までは、人材派遣会社のスタッフ向けに3DKの部屋を3人入居用に貸し出していたが、人材派遣の需要拡大が見込めないことからターゲットを新婚、ファミリーへとシフト。そのため、間取りを2LDKに変更し内装も変更した。

最後の4点目は、清掃など環境美化の徹底だ。共有のごみ置き場の修理、ごみの分別、1階専用庭の草むしり、春・秋の環境美化運動、放置自転車の整理、壁・給排水管の保全、結露防止の通知の7項目の改善策を行った。以上の対策を実行した結果、8カ月後には15戸、1年かけて16戸すべての空室が解消した。

「家主一人ではうまくいかない。家族をはじめ管理会社、リフォーム会社、仲介会社、さらには地域とのコミュニケーションを考えながら進めていくことが、いい環境をつくり出す」と加藤さんは語る。