「借金完済までは税金と金利との闘いだ」

多額の借り入れをして物件を購入する場合は慎重にシミュレーションを重ねることで、購入後の賃貸経営をより負担なく実行できる。逆に、あまり考えずに購入してしまうと、買ったはいいが、その後の経営が苦しくなり、本業あるいは自身の生活にも影響を及ぼす事態になりかねない。多額の借り入れをして始める家主業で確実に資産を増やすためには、不動産を精査する力が重要だ。

「賃貸経営は借入金の返済が終わるまで、税金と金利との闘いだ」と話すのは、メガバンクや外資系証券会社の元債券トレーダーで、在職中に家主業をスタートし、現在、アパートとビルを6棟所有して専業家主の傍らキャッシュフロー経営をテーマにしたセミナーを数多く行っている川村龍平さんだ。

近年、サラリーマンで不動産を購入し、賃貸経営をする人たちから資金繰りに関する相談が増えているという。その中でも多いのが、表面利回りを見て、安易に購入してしまったために資金繰りが苦しくなってしまうケースだという。

元利均等返済で融資を受けると、スタート当初は借入金利息の経費化で所得を圧縮できるので手元資金が残りやすいが、返済が進み徐々に利息が減少してくると、不動産所得の経費が減り、所得が増えて税金が上がり、資金繰りが苦しくなる。その厳しい時期を乗り越えて完済すると、空室対策等の本来の賃貸経営に集中することができるようになり、ここで初めて本来の家主業の妙味が感じられるのだ。

「地主家主」と「サラリーマン家主」はここが違う

家主業というと、基本的には代々土地を持っている地主が、その土地を活用してアパートやマンション経営を始めるケースが圧倒的に多い。そんな「地主家主」と、土地がないところから不動産を購入して始める家主とを同じように考えてはいけない。

「私もサラリーマン出身だが、建物部分だけ借金するのと、土地・建物の両方を借金するのとでは借り入れ負担は大きく違う」と川村さんが話すように、土地活用で経営する家主とではそもそも「発射台」が違う。土地の取得費が必要か必要でないかという必要な資金の規模だけでなく、土地代が経費にならないことは税金面から見ても大きな負担となる。そのことを理解していながら、川村さんはなぜ収益不動産を買い進めたのか。

始めたきっかけは、30歳を過ぎたころ、節税対策としてワンルームマンションを買ったことだった。確定申告をすることで税金の基本的な知識を習得できたというメリットは感じたものの、利回りが低かったため、不動産投資で大きく儲けるためには土地付きの一棟ビルかアパートを購入する必要があると気づいたのだという。

以後、質素倹約に努め、不動産購入のための資金を貯めながら、不動産会社回りにいそしんだ。まだ今ほどインターネット上で物件情報を探すことができなかった時代だ。物件情報は徐々には集まり始めたが、なかなかいい物件とは巡り合えなかった。

待つこと3年。ようやく東京都世田谷区のビルを購入することができた。2002年のことだった。以来、最大3億円の融資を受けていたこともあったが、徹底したコスト管理と入居者対策で、収益性が高い賃貸経営を実現し、あと2年半で大半の不動産のローンが完済できるという。