「先生っぽさ」を優先した本を作り続けるだけでいいのか

一番大きく変えたのは装丁で、かなり大胆にイメージチェンジしました。目立つ色合いに、カッコよくてスタイリッシュなデザイン。これがリニューアルのポイントです。「板書シリーズ」の中身は非常にソリッドで洗練されたものに仕上げています。だからこの本を使えば、先生たちも子供たちの前でカッコよく授業ができます。だったら表紙のデザインも、内容の品質に見合ったものにしたい。それがリニューアルを決断した理由です。

リニューアル

「板書シリーズ」だけでなく、それ以外の書籍についても、すでに何年も前からカバーデザインはかなりスタイリッシュものに移行しています。今までと同じように「先生っぽさ」を優先した表紙の本を作り続けていたら、やはり先生っぽい本を作っている他社の教育書の間で埋もれていくだけ。本は手に取ってもらって初めて売れるのだから、「カッコイイ本だな」「キレイな表紙だな」と外見で興味を持ってもらうことは大事だと考えています。

——社長に就任して8年がたちました。これから10年先、20年先をどう考えていますか。

東洋館出版社 社長 錦織 圭之介氏
撮影=プレジデントオンライン編集部

売上や利益は、事業内容に応じた規模というものがあります。だから紙の本を扱う出版社として、その域を超えるほどの数字を目標にしようとは考えていません。それに数字を目標にすると、社員たちがそれに踊らされて、数字のために作りたくない本を作るようになってしまう。それだけは経営者として絶対にやりたくないんです。だから私としては、社員がやりたいことを気兼ねなくやれる会社を作っていきたい。ただそれだけですね。そうすれば結果的に数字はついてくるだろうし、現に今も売上は伸びているわけですから。

私は60歳で社長を引退すると決めています。こんなことを言うと上の世代の先輩がたから生意気だと怒られるでしょうが、やはりその時代に合った物の考え方や経営の仕方があるはずです。それを70代や80代のオジサンが追いかけられるとはとても思えない。

だから自分で期限を決めて、それまでにやりたいことは全部やる。やっぱり最後に後悔だけはしたくないって思うんですよ。

(構成=塚田 有香)
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