電流を交流から直流に変えたり、電圧を上げ下げしたり、電気の流れをきめ細かく制御する「パワー半導体」。電力を効率よく使えるため“省エネ半導体”とも呼ばれ、今夏に予想される電力不足を見越して需要が一段と高まっている。
エアコンの省エネ効果で知られる「インバーター」は、パワー半導体を組み込んだ部品を指すが、日本はこの分野で世界のトップを走る。日本メーカーの中では三菱電機の世界シェアが高いうえに、とりわけ中国市場の伸びが著しく、山西健一郎社長はこんな現状を披露した。
「日本製エアコンのインバーター化率は100%ですが、中国も環境問題への配慮からエアコンへの搭載を急いでいます。エアコン最大手・格力のインバーターはほぼわが社の独占状態ですし、美的も半分以上はうちの製品を使っています。そのほか、ハイアール、ハイセンスにも納入していますから、中国製エアコンの7割以上に使われている勘定です」
つまり、これは中国において三菱のインバーターがざっと1000万台を超えるエアコンに使われている計算になる。
DRAMメモリーにしろ、液晶テレビにしろ、日本が強いといわれた製品が韓国や台湾企業などの追い上げで、急速にシェアを落としてきた例は枚挙にいとまがない。インバーターを構成する基幹部品のパワー半導体も、現状では日本の強さが光るが、韓国勢などにシェアを喰われる恐れはないか、山西に質してみた。
「韓国もLS産電というところが、ドイツの半導体メーカー・インフィニオンと組んで開発しているはずですが、製品は出てきません。競合するのはフェアチャイルドぐらいで、パワー半導体のモノづくりは極めてアナログ的ですし、とくに品質と価格のバランスをどう取るかに難しさがあって、なかなか追いかけてこられないのだと思います」
よく言われることだが、日本が完敗したDRAMメモリーは外から製造装置を買ってくれば、基板になるシリコンの表面に回路を浅く焼きつけるだけなので誰でもつくることができる。