「不都合な真実」が数字で表れるかもしれない

その数字とは、総務省統計局が毎月発表する「労働力調査」である。前月の結果を翌月末に発表する。つまり、4月分が5月29日に公表されるのだ。4月末に公表された3月分では、新型コロナの影響はまだ本格的に表れていない。就業者数、雇用者数とも87カ月連続の増加となっていた。87カ月というのは第2次安倍内閣が発足した翌月の2013年1月から前年同月比でプラスが続いているということだ。安倍首相が繰り返し「アベノミクスの成果」として強調してきた数字である。

5月末に発表される4月分では、そのプラスの記録が途切れることになりそうだ。3月の完全失業率は2.5%で、2月に比べると0.1ポイント上昇したとはいえ、まだまだ「完全雇用」に近い数字を保っている。それが4月にはどこまで悪化するのかが注目される。

新型コロナへの緊急経済対策として政府が力を入れた「雇用調整助成金の拡充」が効果を上げていれば、思ったより失業率は上がらないかもしれないが、そうでなければ大きく悪化することになる。つまり、政府の施策が後手に回っていることを示す「不都合な真実」が数字で表れる可能性が大きいのだ。

「このタイミングで公務員だけ定年延長とはね」

全体としては雇用増が続いた3月分の数字だが、悪化の兆しは表れている。非正規の雇用者数が前年同月に比べて26万人、1.2%減少したのだ。契約社員が30万人減少しているが、新年度を前に正規雇用への切り替えが行われたケースが多かったのか、正規雇用の67万人増で数字的には吸収されている。次いで減少数が大きかったのはパートの18万人。3月段階ですでにパートを減らす動きが出ていた可能性もある。

もっとも4月以降、激減して大きな問題になったアルバイトは、3月段階では6万人増えており、まだ影響は現れていない。非正規雇用は全体で2150万人おり、雇用者全体の38%を占める。4月に入って雇い止めになったパートやアルバイトは多く、この非正規雇用がどれだけ減少するかが最大の注目点だ。

公務員の定年引き上げを実現したい人たちからすると、こうした大幅に悪化した数字が明らかになる中で、公務員だけが定年を引き上げるという議論が繰り返されれば、国民の怒りを買うことは火を見るより明らかなのだ。

「悲願が実現できるラストチャンス、安倍内閣でなければ絶対に通らないと労働組合の幹部は思っており、党の重鎮などに陳情に来ている」と自民党議員は語る。「このタイミングで公務員だけ定年延長とはね」とこの議員は呆れるが、“安倍一強”と言われる中で、官邸が決めたことに反対するのは難しいと言う。