経済は元に戻り始めたのに何だかギクシャク
この友人とは逆のケースもある。別の知り合いは、SNSのグループチャットで「政府による都市封鎖はあまりにも厳しすぎた。友人の家族はお葬式もできなかった」と書いたところ、グループチャットの友人から「何をいうのか。皆ががんばったから封じ込めできたんだ」と批判され、ついにグループを退会したという。
せっかく経済活動が元に戻り始め、街は明るい雰囲気になってきたが、国内のSNS上では、こうした政府肯定派と政府批判派の議論が数多く繰り広げられている。その結果、精神的に苦しくなったり、友人とギクシャクしてしまう人も少なくない。
しかし、国内問題についてはこのように意見が割れる中国人同士だが、その一方、彼らが互いに共感できたり、理解し合えたりする瞬間がある。それは、アメリカやアメリカ人に対する憎悪ともいえる感情を確かめ合ったときだ。
北京在住の友人は激しい口調でこういう。
「アメリカはずっと中国をバカにし続けてきたんですよ。コロナだけでなく、貿易問題にせよ、人権問題にせよ、何でもそう。アメリカは武漢で起きた新型コロナが自分たちの国には影響を及ぼさないだろうと、最初のうちは高をくくっていたんでしょう。だからマスクもつけなかった。油断していたから感染が拡大したんです。正直なところ、アメリカの感染がここまで拡大したのは、中国のせいというより、トランプ大統領が無能なせい。今は自分の人気取りのために中国を槍玉にあげ、国民の怒りの矛先を中国に向けさせ、自分の選挙を有利にしようとしているだけだと思います」
自分たちが苦しいから中国のせいにしたいのでは
前述の友人も同じような意見を持っている。
「アメリカで自分(トランプ大統領)の人気が落ちているから、必死で中国を非難し続けている。大統領だけでなく、一般のアメリカ人も同じ。はっきりいって、白人はこれまでアジア人に対して優越感を持っていたと思います。今は自分たちが苦しいから、誰かのせいにしたい。そして、その対象は常に見下してきた中国と中国人。もしコロナが欧米で最初に発生していたら、ここまでその国を批判しなかったのではないか、と思います」
中国に住む人々にアメリカに対する意見を聞いてみると、ほぼ同様の口調で、このように怒りの声が沸き上がってきた。まるで「共通の敵」を見いだしたかのようであり、SNS上ではアメリカについて厳しい意見を書く人が多い。
その憎悪の感情があまりに激しいことに私はビックリしたが、それはネット上などで世界中から中国が非難されているところを彼らが見て、そのストレスを一個人の立場として受け止めていることと関係しているように感じた。