日本など海外では、中国の共産党政府と一人ひとりの中国人は別ものだと捉え「政府は悪いけど、中国人にもいい人は大勢いるから」という人もいる。それはもちろんその通りなのだが、当の中国人にしてみれば、そうした意見にも素直に喜べず、ジレンマを感じている。中国政府が非難されること=まるで自分自身が非難されているように受け止め、苦しさを感じ、不満を募らせているのだ。

「将来アメリカの大学になんて絶対通わせたくない」

そうしたストレスがコロナ禍によってたまりにたまってきているせいか、そのストレスのはけ口として、彼らの反米意識はどんどん高まっており、今、それはささいなところにまで及んでいる。

子どもをインターナショナルスクールに通わせている中国人の友人夫婦は、ともに有名企業に勤務するエリート一家だ。日本や欧米にも友人がいるが、その夫婦でさえ「アメリカ」という言葉には敏感に反応し、敵意の感情をあらわにした。

この夫婦は以前、子どもを高校からアメリカに留学させたいと話していたが、SNSで連絡を取ってみると「子どもは小学生ですが、このままインターに通わせることに躊躇しています。将来アメリカの大学になんて絶対通わせたくないから。英語は必須科目ですから今後も学ばせますけど、中国の中学に進学させようかと思っているんです」とすっかり心変わりしていたので驚いた。

その夫婦によると、以前はアメリカに移民したり、子どもを留学させたりする人が多く、ビジネスチャンスの多いアメリカの人気は高かったし、なんだかんだいっても憧れの国だった。

アメリカの小学校に子どもを通わせるために母親と子どもだけアメリカに渡った知り合いも多かったというが、新型コロナが発生して以降、彼らの多くは中国に戻ってきてしまったという。アメリカに対する感情の悪化もあるが、実際にアメリカで生活していて、アジア人差別を受け、スーパーでひどい目に遭ったことがあるからだそうだ。

中国人と他国の人との間に大きなズレがある

具体的な差別の内容については聞けなかったが、コロナ禍でのアジア人差別という点では、日本人も同じように欧米で被害に遭ったり、嫌な思いをしたりしている人が多い。特に中国人の場合、日本人よりも欧米に住んでいる人数が多く、また、豪邸に住んでいたりするなど、何かとその存在が目立つため、中国人の被害者意識は、同じく海外に住む日本人よりも高まっているように見える。