悪すぎる初動、タイミングに完敗

もうお察しだろうが、コロナ禍の真っただ中での船出を強いられたのだ。結果、どうなったのか? ITジャーナリストの石川温氏が語る。

「テレビCMはばんばん流れているのに、4月6日から全国の楽天モバイルショップが感染拡大防止のため順次、臨時休業に入っています。その上、誰もが目の前の生活に手いっぱいで、携帯キャリア乗り換えの検討まではなかなか気が回らない。こうした状況でのサービス開始は、いかにもタイミングが悪かったですね。楽天モバイルの契約者数は3月下旬時点で20万台程度と言われています。『300万人までは月額料金1年間無料』の出血サービスまで打ち出していたことを考えると、かなり悪い初動と言わざるを得ません」(石川氏、以下同)

ただしつまずきはタイミングの悪さだけによるものではなく、サービス内容の根本的な問題に起因するところも少なくないようだ。

「楽天モバイルの待ち受け画面では、楽天モバイルの回線とつながっているのか、あるいはKDDIの回線なのかをユーザーが一目で把握することができず、わざわざアプリを立ち上げて調べなければなりません。使用のたびに確認するのは煩わしいのでこの作業を省略し、たぶん楽天モバイルの回線だろうと無制限のつもりで使っていたらじつはKDDI回線のエリアで、あっという間に5GBを使い切ってしまうということも考えられます」

動作保証されていない場合がほとんど

1カ月で5GBの容量はそこそこ余裕があるように思えるが、意外にすぐ到達してしまうという。

「都市部のサラリーマンが会社への行き帰り時、地下鉄で毎日動画を見たりすれば、すぐに5GBは超えてしまいます。また、コロナ禍の影響で急増中のオンライン会議とかオンライン飲み会なら、1時間で1GBぐらい使ってしまうこともありますからね。もちろん、5GBを超えても1メガビットの速度で使えるんですが、画質が落ちたりして快適な使い心地とは言えません」

先着300万人まで月額料金1年間無料のキャンペーンはインパクト大ではあるものの、かといって初期費用が一切かからないわけではない。

「新規ユーザーは、それまで他キャリアで使っていた端末を使えなくはないんですが、動作保証されていない場合がほとんど。だから結局、契約時に楽天モバイルが扱っている専用端末を買わなければなりません」

その端末はといえば、コスパ重視の安価なモデルが中心で、魅力に乏しいラインナップなのだ。

「結局、iPhoneを扱わないことには、他キャリアからユーザーを奪うのは至難の業なんです。何といっても、日本のスマホユーザーが使っている端末の半分はiPhoneですから。iPhoneからAndroid機に変更するのは心理的な負担が大きいので、気軽に楽天モバイルへ乗り換えさせたいのなら、iPhoneの取り扱いは必須条件。しかし、誕生したばかりの楽天モバイルはユーザー数やネットワーク品質などの実績に乏しく、キャリアを厳しくふるいにかけるアップルが、iPhoneの取り扱いをすぐにOKするとは思えません」