コロナの「制圧」は、中国モデルの宣伝にはうってつけ

かねてより、中国が「国内的には世論の弾圧や国民監視を行いながら経済発展し、国際的なリーダーシップを取りうる体制」(権威主義的体制)を喧伝し、開発途上国をはじめとする国々がモデルとして取り入れるのではないかという懸念が指摘されてきた。今回の新型コロナの「制圧」は、中国モデルの宣伝にはうってつけの事例になりかねない。

日頃から国民を監視下に置いて徹底的にデータを収集し、いざとなれば強制的に都市封鎖を行ってでも、感染症の蔓延を封じ込める——そうした状況自体が、感染封じ込めに奏功したのだから。中国が今回の新型コロナ対策でしくじれば、それは習近平体制を瓦解させる契機になるかと思われたが、だからこそ北京では全力を挙げて「制圧」したのだろう。

だがその手法を、結果だけ見て手放しで支持するわけにはいかない。芥川賞作家で中国出身の楊逸さんはこう述べている。

《「隣の家には感染者がいるようです。早く連れて行ってください」と報告があれば当局は強制的に対応するでしょうし、抵抗する人々を見て周りの人が「嫌がっているのだからやめてください」などと言えば、「反革命的態度だ」といって自分が連行されかねない。これは、私も経験した文化大革命の時代と同じ手法です。

となれば、相互不信は当局によって作り出されている面もあるでしょう。一つの村や町で人々が団結し、新型肺炎対応に対する当局非難デモでも起こされれば、共産党体制に揺らぎが生じます。人々を分断しておくことは、当局にとって非常に都合がいいのです。》(新型コロナ蔓延は中国共産党の「殺人だ」|楊逸